30.風紀副委員長と名乗る男。
草壁が応接室に入って来て次の間で床に沈めた。時間は間に合っていた。だけど僕の言い付けを守らなかった罰だ。
それが当然の報い。
最後の一撃で終わらせるつもりだった。彼女が止めに入る前は…。
「……なんで草壁を庇うの?」
『庇ってなどいない。ただこのままでは話が進まないと思ったからな。……それが嫌だっただけ。』
手を引け、と夜依の目が語っているのを感じて不快に思いながらもトンファーを仕舞う。
それを見届けた後夜依は後ろにいる草壁に目をやる。
『おい。お前。』
「!!」
『名はなんとゆう?』
「く、草壁…草壁哲也です…」
草壁は自分の上に立ち尊敬すべきヒバリの一撃を自分よりも小さく細い少女が受け止めた事実に目を見開かせていた。
「(委員長のトンファーを素手で…!何者だこの女子!?それに委員長を呼び捨てに……)」
恐れ多い、我等が委員長を呼び捨てにする事からこの女子生徒がただ者じゃないと草壁は感じた。
『ふむ…。雲雀、こいつ一般にしては中々力があるようだね。』
品定めするように草壁を見た後にくるっと雲雀の方を向く。
その眉間には相変わらず皺が寄っている。
「…彼は風紀副委員長だからね。」
確かに副委員長を決める時に一番中で強かったのが草壁だ。
そう言えばふぅん。と短い返事を返して夜依はソファーへと戻って行った。
「あ、あの委員長……あの人は…」
彼女の後ろ姿を見ていた草壁が口を開く。
「………桜の人だよ」
「桜?……!!」
まさか、とゆう顔をする草壁。
すると凄い勢いでソファーに座る夜依に向かって土下座をしていた。
『!?!』
「す、すみませんでしたぁああ!!!!!!」
『え、は?』
突然土下座をして謝罪している草壁に夜依が意味不明と言いたげに僕を見てくる。
そこで僕を見ないでくれる?
はぁと溜め息をつき、僕も先程座っていた所に腰掛ける。
「委員長のお師匠様だとは露知らず、とんだご無礼を!!!!委員長が俺を殴ろうとしたのは間違いではなかった!!委員長!俺を殴ってください!!」
「ワォ君、マゾだったの?」
『草壁とやら、とにかく落ち着け。私は別になんとも思っとらん。……て、雲雀も乗り気になるなトンファーを仕舞えッ!』
チッ、と小さく舌打ちをする。
『んで、この学ランは?』
床に落ちていた学ランを拾い上げてこちらを見る夜依に、君のだよ。と応える。
『………つまり私もこれを着て活動しろ、と』
「うん。後腕章。これもちゃんと付けてね。」
はい、と風紀と刺繍された腕章を夜依が持っている学ランの上に置く。
いそいそと学ランを袋から出して上に着る。
渡された腕章を左腕に付けて。
『これでいいのか?』
学ランの裾を掴んであちこち見始めた夜依の所へ行き、少し曲がっていた襟元を直してやる。
「うん。似合ってる。」
貴女は分かっていない。
何故僕が貴女を風紀委員に入れたのか、
何故僕が草壁に対して怒っていたのかを……
夜依の腕に付けられた風紀の腕章を見てふっと口角を緩ませる。
風紀委員に入れたのは腕章で繋ぎとめて僕のものだとゆう印を付けておきたかったから…。
草壁に殺気を放っていたのは、夜依の事を想っての事だなんて……
貴女は知らない…。
「じゃあこれからもよろしくね夜依。」
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