22.理性との戦い。
『んで?何故雲雀が私のベッドにいるんだ?』
風呂から出てさっぱりした所でいざ寝ようとベッドの中に入ると当たり前のように続いてベッドに入ってきた雲雀に問う。
「一緒に寝るため。」
あっさり言いやがったなこいつ…ッ!!!
『自分の部屋があるだろ?!』
「昔は一緒に寝てたじゃない」
『いつの話だ……ハァ、あれはまだ雲雀が小さかったからだ。今は違うだろう。』
雲雀と私の歳の差は一つ。どう考えてももう添い寝をするような歳ではない。
「ふぁあ……じゃ僕は寝るよ。」
『はっ!?お前人の話を……ッ!』
「お休み」
数秒も経たずに寝息が聞こえ始める…。
なんて寝るのが早い奴だ…。
すぐ隣で気持ちよさ気に寝ている雲雀の髪を指に絡める。
サラっとして絡む事なく指をすり抜けるそれ。
肌は白く、綺麗に整った顔にこの髪の質と来たもんだ……
お前、本当に男か?と、疑いたくもなるような容姿を持つ雲雀。
『………ハァ、明日は早いからな。私も寝るか。』
髪をといていた手を離し自分もベッドに横になり目を閉じた。
今日だけ一緒に寝て、明日からは自室で寝かせれば良い。
そう考えを纏めて、夢の世界へと堕ちていった…。
―雲雀said―
隣から聞こえてきた寝息にパチッと目を開ける。
寝ていたと思われていた雲雀は実は始めっから寝てなどいなかった。
先程夜依に撫でられていた髪。優しく、暖かい手の平だった…。
あまりの気持ち良さに本当に寝ちゃうかと思ったよ。
瞳を閉じて静かに寝ている夜依の寝顔をじっと見てから細い夜依の身体を引き寄せ、腰と背中に腕を廻して抱きしめる。
― 暖かい……
さっき夜依が僕にしたように彼女の長く黒い髪を救い上げる。
そしてまた寝顔を見る。
白い肌に長い睫毛。細い身体には考えられないほどの力と強さを秘める彼女。
ふと目に入った光景に雲雀は顔を赤らめる。
先程夜依の身体を抱き寄せた時に夜依には大きかったシャツが擦れていた。今は横向きになっているため、下にしている右肩のシャツが鎖骨下まで擦れ下がっているから胸の谷間が見えている。
「……ッ!!」
咄嗟にばっと腰に掛けてあった布団を夜依の顎下まで被せた。
「……理性持つかな…」
人より己の欲は抑える、理性を保つ事は出来る方だけど………
好きな子が自分の服を着て無防備に隣で寝ているんだよ?
普通の奴ならここで理性を失って襲うが僕は違う。
己の欲の為に大切な夜依を抱きたくないし、傷付けたくない。
嫌われたくない……。
「……今はこれぐらい許してよ」
額にキスを一つ落として夜依の身体を抱きしめて雲雀もゆっくり眠りについた。
― END ―
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