20.いつ帰って来てもいいように。
風呂場から水が流れる音が聞こえる。
あの後夜依と雲雀は近くにあるコンビニまで買いに行っていた。
まさか荷物を知り合いの家に置いてきた、とはね。まぁ僕が無理矢理連れて来たから仕方がないか…。
さっき煎れたコーヒーを口に含んでいるとガチャと扉が開く音。
「………」
『ふぅ…すっきりした。ありがとひば……雲雀?』
つい顔を背けてしまった…。だって……あの格好はヤバイでしょ…。
『雲雀?オイ、』
「//風呂……入ってくる」
そう言って居間から出ていってしまった。
『なんなんだ?』
腕を組んで考えるが…
『ま、いっか……』
すぐさまどうでも良くなり雲雀から借りたシャツとズボンで前に使っていた部屋に向かう。
『…っ、しかしこのシャツデカイな……』
ずるっと肩から落ちるシャツを引っ張る。ズボンもほぼ引きづる感じ。
………雲雀の奴…こんなに大きく成長しているのか……。
男は女より成長は早いと聴くが……
『なんかムカつくな…』
昔は私の方が大きかったのに……
五年とゆう穴がここまで人を変える……恐ろしいものだな。
部屋にたどり着き戸ってを捻る。
『!!………本当に……あの時のままだ……』
電気をつけないで暗い部屋の中に足を踏み入れる。暗い中で何故部屋の様子が見えるのか……。
私が闇に生まれ闇に育ってきたからだ…。
『…此処だけは…変わらないでくれた……』
私は変わってしまったがこの部屋は変わらないでいてくれた…。
それが、少しだけ嬉しい。
……ん?五年このままだとしてもなんか……綺麗過ぎないか…?
ベッドの横にある小さな机の上に指を滑らせる…。
『……埃が、ない』
そう、埃がないのだ。
五年とゆう月日は一日や二日部屋を空けていたとゆうものではない。
なのに、綺麗過ぎるとゆう程、部屋に埃がない…。
不思議に部屋を見渡していると居間の方からガタンッと鈍い音が聞こえ、もの凄い勢いで扉を開けたり閉めたり、の音が段々とこちらに向かってくる。
「夜依ッ!!??」
『な、なんだ?』
息を乱して部屋の前まで来た雲雀に驚きながらも応える。
私がいる事に気が付くと早足で近付いてきて腕を引っ張られ雲雀の胸へと倒れる。
ギュウッときつく抱きしめられ。
風呂から上がったばかりで二人とも髪が濡れて冷たい。
『雲雀?』
背中に手を廻しポンポンッと叩く。
「……知り合いの所に、行ったのかと思った…」
『?』
「……お風呂から上がって居間に行ったら…夜依が居なくて……出て行ったのかと思った…!」
肩に置かれた濡れた髪がシャツの布を濡らす。
『…もう黙って雲雀の前から居なくならないよ。約束する。』
黙って雲雀の側から消えないよ。約束する。
『雲雀……この部屋、本当にあの時のままなのか?』
雲雀の胸板を押して少し離れると先程の机を見る。
「?自分の部屋だから見たら分かると思うんだけど…。」
『あ、そういう意味じゃなくて……埃がない…』
あぁ、と意味が伝わって
「だって毎月掃除してたからね」
……………は!?
『お、お前!掃除してたのか!?』
「そうしとけば夜依がいつ帰ってきても…………この部屋が使えるでしょ…」
視線を外して少し頬を赤らめて言う。
『なんだか……私は雲雀に救われてばかりだな…
』
ぼそりと言った言葉は雲雀の視線が外れている為、聞こえることも、夜依がどんな表情で言っていたのかも、知る事は無かった。
『そうだ雲雀。私は明日から中学校へ通うそうだ』
「…は?」
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