19.強い瞳に惹かれ
速足で家に向かっていると、前を歩く黒い物に目がいく。
「夜依?」
『雲雀!』
黒い物は先程先に帰らせたはずの夜依の姿。
なんでまだ此処にいるの?
「…家、忘れた?」
『んな訳ないだろ!私が並盛を好きなのは雲雀が一番知っていると思うが?』
「!」
不意打ちな夜依の言葉に一瞬目を見開いた。
嬉しかった。まるで夜依の事を一番に分かっていると言われたみたいで…。
「じゃあなんでまだ此処にいるの?」
『……知り合いに…会いに行っていた。』
「…ふぅん」
夜依は知り合いとやらの話になると目を反らす。今も僕と目を合わせないようにして隣を歩いている。
………なんだか気に喰わないな…
『雲雀?』
夜依の手を取って引くように先を歩く僕を不思議そうに見る夜依。
左の道を曲がると見えたのは僕の家。
予備の鍵をポケットから出して鍵を穴に入れて開ける。
『?お前、二つも鍵を持っていたのか?』
「念のためにね…」
家に入り居間へと夜依を引っ張ってゆく。そのままソファーに座らせ自分も隣に座る。
夜依を見ると久しぶりのこの家に周りを見渡していた。
『懐かしいな…此処も、並盛も、何も変わらない……』
懐かしむ様に言う。
何処か淋しげに…。
ねぇ夜依。この五年の間、何があったの?君は前みたいに接しているつもりだろうけど違うよ。今の君は、昔と違う。前より人と自分の間に壁を作りやすくなってる…。
「此処ならゆっくり話せるね。」
『?雲雀…』
「ねぇ夜依。どうして君はまた日本に来たんだい?」
『!?』
「さっきから不思議に思ってた。この五年、貴女は一度も日本に帰って来なかった…。それが五年経って日本にまた現れた。五年前の時貴女は仕事だからとゆう理由で日本へ来たと言っていた。今回も何か仕事があるから日本に来たの?」
じっと夜依の目を見て話す。夜依もまた僕の目をじっと見詰める。
『……ハァ…お前も鋭くなったね。』
溜息を着くと夜依はトサッとソファーの背もたれに首を預ける。
そうすると自然に顔は上を向き、夜依は暫く天井を見つめた後に重々しげに話し出す。
『今回も仕事だ。まだどんな仕事かは…言えないけど……今回は前より長い任務になりそうなんだ。』
「………。」
目を閉じて話す夜依。
ギシッと腰を浮かせて背もたれに頭を預け、目を閉じて上を向いている夜依の前に身体を滑り込ませる。顔の両脇のソファーに手を付いて夜依の顔を見下ろすようにして。
ゆっくりと開かれた蒼い瞳。多分夜依には僕の顔しか映っていないだろう。見ていた天井は今では僕の後ろにあるんだから。
長い前髪が夜依の頬や額にかかる。
「長いって…いつまで?」
『…分からん。』
「何の仕事をしているのか教えてくれないの?」
『教えない』
相変わらず真っすぐな目で僕を見てくる。
強く堅い意思を持つ瞳。この目に僕は惹かれた。夜依は自分の意思を貫き通すタイプだから今何を言っても教えてくれないに決まってる…。
小さく溜息を零すと顔の両脇に付いていた手を退かしまた夜依の隣に腰を降ろす。
『?』
「もういいよ。どうせ何を聞いても教えてくれないんでしょ…」
プイッと私から顔を背けて隣に座る雲雀。
その行動が可愛いく思い頭を撫でる。
『そうむくれるな…。いつか………ちゃんと話す』
「…絶対にね。……それより子供扱いしないでくれる?」
嫌そうに言っているが顔はそうは言っていなく、少なからず嫌ではないのだろうと解釈する。
しかしあんまり撫でてると機嫌が悪くなるな、と撫でていた手を下ろす。
「夜依、先に風呂に入ってきなよ」
『雲雀は?』
「僕は後でいいから。先に入っていいよ」
『そうか、ありがとう…。では先に失礼するよ。』
立ち上がり迷う事なく歩いていく後ろ姿を見ていると不意に夜依が振り返る。
『雲雀……』
「?なに…」
『……下着が、ない…』
「///ッ!?」
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