18.君がいて僕がいる。



―バキィッと校舎裏で響く音。



事の始まりは数分前…









せっかく夜依と再会出来て機嫌が良かったのに一本の電話が鳴ってから機嫌は一気に下がる。


愛校の校歌もあの時だけは嫌に感じたよ…。




愛校の校歌が鳴り、ピッとボタンを押して耳に宛てる。
隣では何か夜依が引いていたけど何に?





―委員長!今どちらに?あの桜木の所に?



草壁は唯一僕があそこに行ってる事を知っている奴。だから今もまだあそこにいると思ったんだろう。




「いや…それよりなに?早く用件言ってくれない…。」



低めの声で返すと電話越しから慌てた声で



―い、いえ!実は、並盛中の校舎裏に違反者が委員長を出せだのと大暴れしていまして…!




ふぅん。この僕に戦いを挑もうとするとは低脳の持ち主のようだ。
いつもならすぐに行くけど今は隣に待ち望んでいた夜依がいる。
今は彼女と一緒にいたい。



「他の委員にやらせればいいでしょ」

―あ、いえ、他の奴らはまだ病院です…


「…………」




そうだった…。つい一昨日ぐらいに役立たずな奴らを咬み殺して病院送りにしたんだっけ…。
まだ帰ってきてないなんて本当使えないね。




―…委員長?


中々返ってこない返事に副委員長が呼ぶのが聞こえた。



「ハァ……今からそっちに向かう。」





不服に思いながらブチッと電話を切り夜依を見る。



「夜依、僕は少し行かなきゃいけない所があるから先に家に帰って待ってて…」


『そうか…ん。分かった』


「これ家の鍵ね。貴女の部屋はあの時のまんまだから。」



繋いでいた手を解いて、その手の平にポケットから出した家の鍵を落とす。




『!あの時のままって…帰ってこないかもしれないと考えてはいなかったのか?』



手の平に乗った鍵を握り絞めばっと僕の顔を見る夜依。
家の鍵……壊さないでよ


「帰ってくるとも考えていたからね」



そう応えればなんか口を歪ませてぶつぶつと言い始めた…。だって貴女の部屋を片付けてしまったら…今まで夜依と過ごしてきた日々が夢なんじゃないかって……
夜依と僕の繋がりが無くなったらそれこそもう夜依とは会えなくなると思ったから……だなんて口が裂けても言わない。


まだ夜依には言ってあげない。
僕だけが貴女を想っているのは公平じゃないからね。絶対に好きって言わせて、惚れさせてみせるから……覚悟しててよ、夜依………






「じゃあ僕は…行くから…」




やっぱり彼女を一人にさせるのはなんか忍びない…。さっきみたいに草食動物に絡まれたら?


夜依は僕より強いから倒されるとかそんな心配は全然していない。



けど、草食動物の目に夜依が入る事が嫌なんだ…。



夜依を一度見た後後ろ脚を引かれる思いで来た道を戻って行った。












そして今に至る。




僕を呼び出した低脳の持ち主は今僕の下で咬み殺されて気絶している。
弱い癖に呼び出すなんて馬鹿だね。




「草壁、こいつら片付けておいて」



後ろで待機させていた草壁にそう言うと夜依が待つ家へと向かう。






早く帰ろ……。



あそこが、夜依の居る場所が、僕の居場所だから…。






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