15.住む家。



「そういえば夜依、住む家はどうするの?」




五年振りの再会を満喫した僕は夜依と二人で並盛を徘徊していた。そこでふと思った事を聞く。




『ん〜、知り合いが家に住まわせてくれるみたいなんだ』



「………なにそれ」



『いや……なにそれって……なに?』


「僕が聞いてるんだけど…前みたいに僕の所に来ない訳?」


『え、いや、だから…』


「僕以外の家に住むなんて許さないから」


『………』


「……なに?」




目を見開いて驚いた顔をしてこちらを見る夜依にむっと顔を歪める。なに、嫌なわけ?




「…嫌なの?」


『……いいのか?』




……なんだか話が噛み合ってないような気がするんだけど…。



『また……雲雀の家に…住んでも、良いのか?』




あぁ……そうか…貴女は…遠慮してるんだね。
あの家は…最後に貴女と別れた場所だから…。

彼女は認めた相手の前と認めていない相手の前とでは対応が全然違う。
一応僕は彼女の認められてる分類に入るらしい。まぁ名前で呼んでるからね。





「いいも何も、夜依の住む場所はあそこしかないよ」


『…ハァ…また何を根拠に…』


「夜依は…ずっと僕の傍にいればいい…」




僕の隣にいて許されるのは今も昔も…夜依しかいない。




『!!そうか……お前はそんなに………』


「……!」




さ、流石に気付いてくれたかな…?
赤く染まる顔を隠すためぷいっと顔を夜依から背ける。






『そんなに私を師匠として想っていてくれたのかっ!!』




ずるっ



「〜〜(そうだった、君はそうゆう子だったねッ!!)」





少し輝いた瞳で見上げてきた夜依にこけそうになったけどそれは並盛の秩序としてのプライドが許さない。
だけど……






「……///(この人、自分が上目使いしてる事に気付いてないよね)」


『?雲雀?』


「いや…あ、僕以外の奴にそれやっちゃ駄目だからね……ハァ…今はそれでいい…ほら、行くよ」



手を差し出されるが夜依はその手と雲雀の顔を交互に見る。



「……本当、貴女はいつまでたっても鈍いね」


『!なっ……』


「帰るんでしょ?」





― 僕のいる場所に……




そう目が語る雲雀に夜依は思わず苦笑いしてしまった。
それも一瞬で元に戻したから雲雀には気付かれなかったろう…。
差し出された手を遠慮がちに握り返す。



嬉しそうに目を緩め何処に向けては分からないが足を運ばせる雲雀。






『(………駄目なんだ、雲雀。お前を…こちらの世界に引きずり込んではいけない。それもあってお前には会いたくなかった…)』





けど……その気持ちとは裏腹に、雲雀に会えたことやまた雲雀と一緒に居られる…そのことが嬉しい……のかもしれない。



私らしくもない感情だ。





単独を好み、群れることを嫌う私が…



それは雲雀も同じはずだ…




私達は、まるで鏡のように浮き写しだからな。














しばらく歩いていると突然何かの歌が流れ始めた。





―み〜どり〜たな〜びく〜な〜み〜も〜り〜の〜♪ ―





『な、なんだこの曲――ピッ―



「なに」




隣を見ると少し不機嫌そうな顔で耳に携帯を宛てている我が弟子。




………お前の着信音かっ!!!!



少し引き目を感じていると話終えた雲雀がくるりとこちらを向く。
何処か不服そうな顔をして口を開いた。




「夜依、僕は少し行かなきゃいけない所があるから先に家に帰って待ってて…」


『そうか…ん。分かった』


「これ家の鍵ね。貴女の部屋はあの時のまんまだから。」



繋がれた手を解かれ、その手の平にチャリッと落とされた鍵。




『!あの時のままって…帰ってこないかもしれないと考えてはいなかったのか?』


「帰ってくるとも考えていたからね」




………昔と比べてお前口が達者になったな…。




「じゃあ僕は…行くから…」



また不服そうな顔をして私を見た後、渋々といった感じで今来た道を戻って行った…。




『……なんであそこで私を見る必要がある…』




と首を傾げた後にあ、と口漏らす。


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