13.会いたかった
『………』
「…………」
『雲雀、いい加減に離してくれな「いやだ」
……最後まで言わせろ馬鹿弟子(怒)
しかも否定の言葉かっ!さっきから公園で抱き合っている私達。
離せと言うが返ってきたのは即答な否定言葉。
「だって離したら……また夜依が消える。」
『――っ』
「だから離さないよ」
また強められる力。
こ、こいつ昔よりかなり力強くなってないか?!
『背骨が折れる。今すぐ離さないとイタリアに帰るぞ?』
そうはっきり言えばあっさり離された身体……と思いきや雲雀と私の間に少し隙間が出来ただけで背中に回された腕は一向にどかない…。
『………私は離せ、と言ったはずだけど?』
「これぐらい許してよ。」
当然でしょ 的なノリで言うなッ!
「僕の前から勝手に消えた夜依が悪いんだ。」
悲しげに揺れる瞳。
………はぁ…
本当、昔も今も、私が甘いのは雲雀と彼ぐらいなものだ…。
「ねぇ夜依、なんで五年前、僕の前から姿を消したの?」
『……今は、まだ理由が言えない。』
「…そう」
また顔に影がさす。
本当、昔と変わらないな、雲雀は。
だがそれでいい。お前は何も変わるな…
私みたいに……変わってはならない。
『だけどこれだけは言える。私はあの日、好きでお前の前から姿を消したんじゃない。』
そう言った夜依の目は真っすぐで……真実の言葉とゆう事が分かった。
「…うん。」
さきほどとは違い、柔らかな返事と表情、何処か安心した表情で言う雲雀。
『………なぁ雲雀』
「?」
『お前は……私を恨んでいるか?』
「…!!」
突然の夜依の言葉に僕は目を見開いて彼女を見る。
しかし夜依は顔を俯かせている為今どんな表情をしているか分からない……けど、きっと無表情だろう。
彼女はいつだって……感情や表情を表に出すような人じゃなかったから…。だからこそ、彼女の事が分からなかった。何を考え、何を感じて、何を思っているのかを……
そんな彼女の口から【恨み】とゆう言葉が出たのに驚いた。
ましてや昔思った僕の想いでもあったしね。
て事は、夜依は五年前のあの日、僕の前から姿を消した事を少なからずとも後悔してる…って事だよね?
そう考えると嬉しく感じるのと同時に馬鹿師匠、と思った。
「馬鹿だね」
『!馬鹿とはなん…』
背中に回していた腕を解いて夜依の両頬を包み込むようにして引き寄せコツン、と額と額を合わせた。
「馬鹿だよ。馬鹿師匠。馬鹿夜依。」
『………きさま…』
あ、夜依が目をつむって額に青筋を立ててる。怒る五秒前って所かな…。
「だって馬鹿としか言えないよ」
『!おまっ……』
無理矢理僕の額から己の額をベリッと剥がして怒鳴ろうとした夜依よりも先に口を開く。
「僕が君を、恨めるはずがないじゃない…」
言うと夜依の釣り目の目は今は丸くなってぽかんと僕を見る。
そんな夜依の離れた顔を引き寄せまた優しく額を合わせ夜依の瞳を見詰めながら言う。
「貴女を恨めるはずがないよ。」
『な、ぜだ…私はお前を……裏切ったんだよ?』
幼かったお前を、どんな理由であれ傷付けたのだぞ?
「でもそれは君の故意じゃなかったんでしょ?」
『……う、む』
目線を横に泳がせ僕と目を合わせないようにする夜依。
「(夜依って相変わらず押しに弱いんだ…)」
昔から気が強い彼女だけどそんな彼女でも押しには弱かった。
そんな可愛い所は相変わらずなんだね。
「夜依、ちゃんとこっち見て。」
『え…?』
「夜依が聞いたから僕も真剣に話てるんだ。人の話を聞く時は相手の目を見て聞けと僕に教えたのは…貴女でしょ?」
『――!!』
にやりと間近で口角を吊り上げる雲雀に何処か怒りを感じた。
こいつ、絶対にわざとだッ!!!!!
『〜〜〜』
確かにそう雲雀に教え込んだのは私だ。
しかし良く覚えていたなこいつ。
仕方なく目線を元に戻して視線を合わせる。
それに満足げに微笑む雲雀。
「確かに………幼かった僕は貴女を恨もうとも思った」
『!あぁ……』
それが当然だ。
間違ってなどいないよ雲雀。
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