12.再会と想い



「夜依?」


『!?』




あの人の名前を呼ぶ。
その瞬間弾かれたようにこちらに身体の向きを変える。







風になびく黒い髪。
僕を写す瞳は海を思い出させるサファイアの瞳。













『ひ…ば……り…?』


「ッ、夜依!!」




綺麗になった夜依だった。





夜依は目を見開いて僕の顔を見詰める。
僕は手に握っていたトンファーをカランッと地面に落とし会いたかった彼女に走って僕より少し背の低い彼女を抱きしめた。夜依の髪からふわりと甘い柔らかな匂いが鼻をくすぐる。

その事に彼女が今腕の中にいる。と実感出来て、もう離さない、そう想いを込めるように背中に回した腕を強める。








やっと、やっと夜依に会えた・・・・・ッ!!!!!
どんなに待ち望んだ光景だろう…









「……会いたかったッ!!」





首筋に顔を埋めて言う。するとやはり甘い花のような匂いが彼女からした…



































「夜依?」



そう名前を呼ばれた瞬間全身に電気が走ったかのような衝動。



私が聞きたいと思っていた声に似ていて、その声の主が私の名前を呼んだから―。





私の名前を呼んでいいのはアルコバレーノに………あの子しかいなかったから…
ばっと振り返って私を呼んだ主を見れば…






そこには昔より大きく成長した



『ひ…ば……り?』




雲雀がいた…。
私の一番弟子で、五年前に置いて行った……あの子が…



見ない間に、成長したのだな…。
五年前までは私の方が身長は高かったのに、今では私が下、か。
顔付きもあの頃より大人びたね。






会いたかったよ、私の可愛い弟子。
だが、会いたくもなかったよ。




五年前に何も告げずに彼の前から姿を消し、彼を一人置いて行ってしまったのだから……




今更どんな面を下げて彼に会えと言うの?
どんな面を下げ、師匠と言える。
私は彼の想い、気持ちを裏切った。
そんな私に、どう雲雀に会えると言えようか…。






手に握っている昔から雲雀が使っていた白く輝くトンファー。その握る力を強めたのが分かる。
やはり、私を恨んでいたか……



無理も無い。小さかった彼に裏切りとゆう事実は辛いものだったに違いない。


普段の私なら殴られるとゆう失態を犯したことは生まれかつて無いし万が一に殴られても相手を死に追い込む………だが、私は殴られても仕方がない事を、幼かったお前にしたね。



まさか日本に来てすぐに会うとはな……





苦いが殴られる事を認めようと心に決めた途端、カランッと鉄が落ちた音と同時に暖かい温もりに身体が包まれた。




「ッ、夜依!!」




雲雀?

温もりに包まれたのは雲雀が私に抱き着いたから。背中に腕を回され強く引き付けられる。




そう、まるでもう何処にも行かせない、離さない、とでも言っているかのように…。





やはり、寂しい思いをさせてしまったようだ…。


すまない、すまない雲雀。私を恨んでくれて構わない。だが決して、あの日、好きでお前の側から離れたのではないということだけは………分かってほしい。





黙って抱きしめられていると不意に雲雀が首筋に顔を埋めてきた。




んなっ!?///



















「……会いたかったッ!!」




苦しそうに吐かれた雲雀の言葉に赤くなっていた顔が元に戻る。









そんな彼に会いたくなかったと言う事が出来ず、もう一つの本当の気持ちを伝える。








『私も、お前に会いたかったよ………雲雀』



「…夜依、夜依、夜依ッ……!」





もっと呼んで、もっと僕の名前を呼んで夜依…




『雲雀、雲雀……私は此処にいる。お前の傍にいるよ、雲雀…』




背中に回された僕のとは反対に細い腕。
お互いに抱きしめ合っている状態。
名前を呼んでくれる夜依。でも、それだけじゃやっぱり安心出来ないんだ。






「夜依、ちゃんと言って…」





僕が聞きたいのは遠回しな言葉じゃない…





『ただいま……雲雀』




「おかえり…夜依っ」








やっと帰ってきた僕の愛しい人。



たった一人の僕の大切な人。









おかえり、僕の夜依…






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