9.その後ろ姿は…
愛する我が学校へ向かう。いつもこの時期はあの桜木の所へ行ってから学校に行く。
だってもしかしたら彼女が帰ってきてるかもしれないでしょ?
…そんな夢みたいなことを願っている僕は重症だ。でもそれは彼女だからこそだ。彼女じゃなければこんな風にはならない。
初めて抱いた感情。
初めて感じたこの想いも…彼女だからこそ……
「っ……情けないね…」
僕はいつから、こんな女々しい性格になった?
並盛で恐れられてるこの僕が、たった一人の女、まして昔に消えた人一人忘れる事が出来ずにいて彼女を慕う気持ちばかりが増す。
「………でも、君しかいないんだ…」
ぼそりと言った言葉は風と一緒に乗って消えていった。
「………?」
その風と一緒に声や音が乗って僕の耳に届く。
何処から?と視線を周りに巡らす。
「…並盛公園」
塀の向こうから群れの声が聞こえてくる。
確かこの塀の向こう側は林になっていて並盛公園がある…。
つまり、そこに草食動物達の群れがいるとゆうこと……
「ふぅん…朝早くから僕の街で群れるなんて……とんだ愚かな奴もいたもんだね」
そんな愚かな草食動物は………僕に咬み殺される。
本当、僕と彼女の街で群れようなんて……いい度胸さ
目の前にある塀を軽々と飛び越える。
着地するとそのまま声のする方へと足を運ばせた。
木が並んでいる林の中を少し歩いた所でその群れは見付かった。
雲雀は獲物を見つけたのが嬉しいかのように口角を吊り上げる。
仕込みトンファーを手に握ってそこでピタッと彼は止まった。
そういえばか彼等、なんか叫んでない?
暇潰しにといつもみたいに咬み殺さないで少しその場面を木の影から見る。
「俺の肩にぶつかってきやがったのに謝らねぇとは見逃せねぇなぁ!!」
ワォ…朝からあんな馬鹿デカイ声で叫んで迷惑だね。並盛の風紀を乱すつもり?
心の中でまず初めに彼を咬み殺そうと決める。
『ぶつかって来たのはそっちだろう…ウドの大木みたいに馬鹿みたいにデカイ図体しているんだ。周りを良く見て歩け。』
………ワォ…言うね、あの子…
黒く腰下まで長い髪をした女子。後ろ姿しか見えないけど…何故だろ。
前にも、似たような後ろ姿を……僕は見たことがある気がする。
けど、どこで…?
「てめっ!可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!!?」
よほど今の彼女の言葉がカンに障ったのか顔が怒りで赤くなっている。
彼女は怯える事なく真っすぐ背筋を伸ばして腕を組んでいるようだ。
……肝が据わっているのかな…
『私が可愛いものと見えるならやはり貴様は目が悪いらしい…。周りが見えないのも納得がいくよ。』
………何故かな、この台詞にデジャヴュって奴?それを感じるのは…。
「下手に出てりゃ付け上がりやがって…!!」
『誰も頼んでいない。それよりそこどいてくれる?私は急いでるんだ。君達弱者と遊んでる暇など私には無い。寧ろ邪魔だ。』
「はっ!遊んでるだと?女、この状況でよくそんなたいそれた事が言えたもんだな!!!」
草食動物のいうように彼の後ろには仲間らしきと思われる男が三人。
そして話を聞いている限り、彼に運悪くもぶつかってしまった彼女は一人。どう見ても彼女が不利な状況……なのに…
「(なんであの子、あんなにも余裕そうにしてるんだろ…)」
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