5.九代目の願い。



無事に沢田家に着いたリボーンと私は今、十代目の部屋と思わしき部屋でコーヒーを飲んでこの部屋の主を待っていた。



「そういえば夜依、お前住む家はあるのか?」


『ん、あると言えばあったんだが………』


「?何か住めない理由でもあるのか?」





飲んでいたエスプレッソを机の上に置き話しに集中する。




『昔、五年ほど前に私が任務で日本へ行った時の事を覚えているか?』


「あぁ。確かそこでお前は弟子をとったそうだったな。」




流石リボーン。そこまで知っていたか…。



『そうだ。五年前、私はその弟子の家に住まわせて貰っていた。』


「ならそこへは住まないのか?お前の弟子なら頼めば住まわせてくれんだろ」




ピョンと私の膝の上に乗り下から顔を覗き込む。そのリボーンの頭を撫で重々しげに口を開く。






『だが……五年前に、私はあの子を置いて帰って来てしまった。何も告げずに………きっと、私の事など恨んでいるか忘れているさ』


「だからそこへは行けない、か」




帽子を目深く被りしんみりとした雰囲気になる。しかし次のリボーンの言葉にその空気も転移した。




「よし、夜依。お前今日からここに住め」


『…………は!?な、何を急に言っている!とち狂ったか!?』



「相変わらずの口ぶりだな。遠慮はすんな。ママンにも後で言っておく」


『…………忘れてはいないかリボーン。』





部屋の温度が下がったかのような寒気。
殺気に近いものだ。




「(……また力が延びてやがるな…)」



『私は群れるのは嫌いだ。次期ボンゴレ十代目だかなんだかは知らんがそんな奴らと馴れ合う気は無い。私はリボーン、貴様だから手伝う事を許可した。十代目とやらの為ではない。』



「あぁ、分かってるぞ。お前は昔から単独を好む孤高の奴だからな。」





だからお前は知らねぇんだ。人の温もりの暖かさに…。
任務も一人でこなして群れる事を嫌っているお前は情の暖かさを知らなすぎるんだ。
誰かに甘える事や頼る事を知らない。
まさに独立自尊な奴。
マフィアや殺し屋にとってはそんな感情は必要ないし持たない。夜依はまさにその感情を持たないマフィアや殺し屋にとっての鏡。





でもな夜依、俺と九代目はお前にそれを知って貰いたいんだぞ。
確かにおめぇは強い。もしかしたらヒットマン最強と言われた俺より、な。だが甘える事と誰かに頼る強さを夜依、お前は知らなさすぎるんだ…。




ツナに会えば、あいつの暖かさに触れれば…少しは変わってくれるだろうとそう九代目は直感したんだろうな。そして夜依の弟子がいるとゆう日本に向かわせた。
九代目は夜依を実の娘みたいに可愛がっているからな。
色々と心配なのだろう。







「夜依、まだツナは帰ってこねぇから久しぶりの並盛を徘徊してみたらどうだ?少しは気分が落ち着くだろ」


『ん?……そう、だな。久しぶりに並盛の空気を味わってくるよ』




提案してくれたリボーンを背に一言礼を言って沢田家を出た。











「……ツンデレなのも変わってねぇな…」





そう口漏らしていたことなど当の本人は露知らず。




―END―


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