2.日本へ帰国。
九代目の依頼で飛行機に乗ってボンゴレ十代目と旧友のリボーンがいる日本へと向かう飛行機内に夜依は居た。
窓に頭を預け昔の事を思い出して…。
自分が初めて弟子を受け入れたあの子との思い出を…。
『足元ががら空き、手に集中しすぎ』
振りかざされたトンファーを身を屈めて避けたと同時にバシッとお留守だった雲雀の足を払いのける。
「ッ!!??」
重力に従って尻餅をつく。
思ってもいなかった攻撃に余程痛かったらしい。こちらを睨んでいた。
「っ…なにするの」
『手に握っているトンファーに集中しすぎて足元が隙だらけだった君の不注意。私が敵だったら次攻撃で君はあの世逝きだったよ。』
今だ地面に座り込んでこちらを睨み付けている雲雀に上から見下す形でそう言うと暫く沈黙だった雲雀が小さく息を吐く。
「………ハァ…あなたってやることは無茶苦茶だけど……言ってる事が正しいから嫌だ……」
苦々しげに顔を歪めて言う雲雀。
今回の修行場は桜が咲き誇っている場所。
強い風が吹き綺麗な桜の花びらが風に乗って宙を舞う。
桜吹雪だね…
その美しさに見惚れていると座り込んでいた雲雀が立ち上がり目の前まで来ていた。
『?どうし……』
「夜依は………ぼくを置いて消えないよね…?」
顔を俯かせているためどんな顔をしているかは見えなかったが小さく雲雀の身体が震えていた。
『…大丈夫…私は此処にいるよ、雲雀の傍にいる。まだ君の修行も終わってないし』
「……………。」
『…ねぇ、なんでまたそんな苦々しげに顔を歪めるのさ……』
「……別に…」
『クスッ……変な雲雀』
小さく笑っていたら不意に雲雀が不機嫌そうに眉を寄せる。
笑ったのが気に喰わなかったのか?
『雲雀?』
「……いつになった名前で呼んでくれるの?」
『は?』
ムスッとして眉間に皺を寄せる。本当に君は小学生かい?
可愛さの欠片もないよ。
『何を突然…雲雀は君の名前だろ』
「それは苗字。ぼくが言ってるのは下の名前。どうして夜依はぼくの名前を呼んでくれないの?」
ムスッとした顔から今度は哀しげに目を伏せる。
『………』
前言撤回。
やっぱり君は……
可愛い奴だよ
『私は自分より弱い奴の名前を呼ぶのは嫌いだ。』
「っ!……うん…」
はっきりと言うとまた更に雲雀の顔に影が差す。
『もう一つ、私は認めていない奴に名前を呼ばれるのは嫌いだ』
「うん………え…?」
伏せていた目を真っ直ぐ私に向ける。
あの時の雲雀の顔は一生忘れないだろう…。
驚きに満ちた顔で私を見る。
「夜依、それって…」
『君はまだまだ弱い。でも私は君の力量を認めている。だからあの日、初めて君と会ったあの日、君が私に名前で呼んでもいいかと尋ねた時…私は頷いた。』
「………」
『私は認めてもいない奴に名前を呼ばせない。』
「…夜依!」
背中に腕を回され強く抱きしめられる。
私より少し背の低い雲雀は肩に額を押し付ける形で口を開いた。
「ねぇ夜依。」
『ん?』
「ぼくが君と並ぶぐらい強くなったら、君を守れるぐらい強くなったら…君が認めるぐらい強くなったら………そしたら、名前で呼んでくれる?」
『!!………あぁ…』
― 約束するよ…その時は……君の名前を呼ぶよ…雲雀。
あの時は驚いたのを覚えている。
初めて言われた言葉だったから…
初めて、守ると言われた。あんなことを言ったのは昔も今も、お前だけだよ…雲雀。
けどね、嬉しかったんだと思う。
人を殺すだけの暗殺者の私にあんな優しい言葉がかけられたのに。
そんな資格、私には無いのにな。
真っ赤に染まった私の手。闇に染まった私の心。何度この身体は血に染まったのだろう。
何度…何百人とゆう人の血をこの身体に浴びたのだろう。
もう、私と君は……違う世界にいる。
だって私はあの日からもう………………
人では無くなったのだから…。
― 間もなく日本(ジャポッーネ)に離陸します………〜〜
『…………』
私情と仕事は別だ。
切り替えなくてはね。
今の私はボンゴレ十代目の家庭教師、リボーンの手助けに来たのだから。
「ちゃおっス」
『やぁ、リボーン…』
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