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TITLE 63.役目と優しさ。 声を上げ、葵はそのまま意識を無くし雲雀恭弥の隣に列ぶようにして倒れた。 これは、予想外でしたね。 ソファーから立ち上がり葵の所へ行く。 そっと葵を持ち上げ自分が今まで座っていた場所へと寝かせた。 顔に掛かった随分と伸びた前髪を退かしてやる。 まさかあそこで意識を取り戻すとは予想外な出来事だったが、僕からすればこれは好都合でしょうか? 多分あれで葵の心は完璧に奥に沈んだだろう。 簡単にはもう意識を引き出すことはない。 「……葵、」 涙と血に濡れた頬に指を添える。 僕はいつも、お前を泣かせてばかりですね。 脳内を横切るのは別れ際…。 最期に見たお前の絶望と涙で歪んだ顔…。 ですがそれも、もう終わりますよ。 後…少しなんです。 お前は僕を恨んでいるでしょう。それでも僕はこの計画を最後まで成功させなければいけない。 葵…… お前の、為にも。 頬を伝う涙を拭ってやり細い体を持ち上げソファーに寝かせてやった後。彼女にやられボロ雑巾のようになった雲雀恭弥を小さな檻とも言える密閉部屋に閉じ込めた。 彼を閉じ込め広間に帰ってみれば狩りから帰ってきていた犬がソファーで寝ている葵の顔を心配気に見つめている所だった。 骸の気配に気付いた犬ははっとして振り返る。 「む、骸さん!葵が…っ!」 葵の頬を流れる血に怪我をしたのかと思ったのか慌てた様子でこちらを見る犬に骸が近付く。 「犬、よく見なさい。これは葵の血ではありません。」 「じゃ、じゃあ葵さんは無事なんれすね!」 パァァと笑顔になる犬に彼は本当に良く葵に懐いている、と思う。 まぁ犬だけでなく、千種もですが。 優しい顔つきで妹を見遣る骸の姿に犬は小さく顎を引いて俯いた。 柿ピー、やっぱり…… やっぱり俺…昔のように…… 『犬ちゃん!』 『犬ちゃん、私、お兄ちゃんや皆がいれば怖くなんかないよ?』 『見てみておにーちゃん!犬ちゃん!ちーくん!小鳥さん、かわいいね!』 あの頃のように、仲の良かった仲間に戻りたい。何より、 自分も柿ピーもきっと… きっと、 骸さんと葵さんが、昔の仲の良かった双子の兄妹に戻って欲しいとそう思い願っているから。 その二人の中を裂いたのは他でもないマフィア。憎い、奴らがいるから俺達も、骸さんや葵さんも……苦しんでる。 葵さん、骸さんを憎まないで欲しいれす。 あの人は兄としての役目を果たすために動いている。それが、葵さんとは考えが違うだけ。 骸さんの優しさは、妹である葵さんが一番知っているはず……。 何も言えず、何も出来ずに貴女を置いて行ってしまった自分と柿ピーを許してほしいれす。 次⇒ (俺も柿ピーも、昔から君が好きだから…それだけは、今も昔も変わらない。骸さんらって………) |