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61.闇に染まった心。








……お兄ちゃんと、再会したくなかったといえば、嘘になる…




会いたいと思ってた。


本当は、ずっと、ずっと一緒にいたかった。



大好きで…私の太陽だった骸お兄ちゃん……。



だからこそ、あの事件があった日の後。
あなたに別れを告げられたことに私の世界は音をたて崩れさり、




そして、更に絶望が私の心を壊した。



あの日の………私がマフィアに捕まった日。
そばにいて欲しかった。嫌いでも、私を疎んでいても良かったから……ただ、





そばにいて欲しかったの…。




会いたいと思っていたお兄ちゃんとの再会が、


まさか……最愛のあなたを苦しめることになるなんて…思わなかった…………






―――――――






ふと身体が軽いことに目が覚める。



『…ここは……』




周りはただ真っ暗な世界、そんな世界に私はいた。なにも無い…虚無感。
何故私はここにいるの?

私は確か…お兄ちゃんと会って……





『!!!』



そう、お兄ちゃんに会って、私は心を奥底に沈められてしまった。



骸と私は一卵性の双子で生まれながらにしてお互いの心は通じ合えた。
だけど人の心を操る能力はお兄ちゃんの方がやすれている。
私は人の心に侵入する能力は苦手。
だから心も簡単に入られてしまう。
心が、弱いから――





『……私の…精神世界…』



なんて、淋しい空間なのだろう…。
私の心は、いつからこんなに冷たく、暗い世界になってしまったの?




額に手を当てる。
普段額に巻いてある包帯の感触がしない。

はっとして頭の周りを触ると髪が下ろしてある。それどころか服装が制服から白いワンピースになっていた。




『………、』



頭に置いていた手を静かに下ろす。



帰らなきゃ…






『…出し…て……』




私を待っていてくれている人の所へ……




『お兄ちゃん!私を、ここから出して!』



お兄ちゃんはマフィアに復讐しようとして世界からマフィアを消すつもりなんだ。






『出してっ…お兄ちゃんっ……!』




葵の消え入りそうな声に反応するかのように周りに光が浮かび上がってきた。
光は次第に収まり葵を囲むようにして止まってそれは四角形の鏡になる。




『な……に、…?』



びくっと身体が震える。なに、この鏡…


恐る恐る鏡に手を伸ばし指が触れた瞬間。







『助け…て…お兄ちゃんッ…』






『―――!!』



鏡に映り出された映像は…





過去の、私の姿。









『嫌いっ…嫌いよ…マフィアも、人間も…ッ!』






鏡の向こうの小さな私は涙を流している。



そう、昔の私は人やマフィアが憎くて堪らなかった。どうして私がこんな目に?って何百回も思ってた…。

ただ、普通の子供として……育ちたかった、生きたかった。
皆が夢を抱いているように、私にも夢が欲しかった。



未来とゆう名の、夢が………。




鏡から目線を外すように瞳を閉じる。


憎くて、辛くて、苦しくて……皆消えてしまえば良いなんて思っていたあの頃。




でもあの人に出会い私の考えは変わって、人間を信じたくなった。
恭弥君だけは、私を見てくれる。私を信じさせてくれる。私に、光と居場所を与えてくれる…温かい存在。


そんな彼を………












― ドカッ ザシュ




……音が…聞こえる…




― ガスッ ドカッ ドカッ




何、この音……




人を、殴る音?




そうだ、これは人を傷付ける音だ。


でも、なんでそれが私の耳に聞こえるの?




いや、止めて!止めて!聞きたくないッ!!









やめてぇぇぇええッ!!!




もう、これ以上聞いていたく無かった私は叫んだ。





― ドカァッ!



すると一番大きな音が聞こえたと同時に私の頬にピシャッと、生暖かい液体が飛んできた感触がする。





― ……ドサッ




そのすぐ後に、何かが倒れた音が私の耳をくすぶった。




少しずつ、頭が覚醒していき暗闇だった世界に色が広がりだし、意識を取り戻した葵はぱちくりと目を見開く。






『……………え?』




何故か私は広間みたいな場所に三節槍を持ち、立っていた。
部屋に充満している鉄の匂い。思わず目眩がした。



目の前に広がる紅い液体。自分の手、顔にもそれらが付着している。
良く見ると、それは血だった。



だ、れ?誰の血?




ドクン、ドクンと胸の鼓動が嫌に早く動く。
鉄の臭いの正体は血独特な臭いだった。
……そんな臭いがこの部屋に充満している。



気持ち悪い。この臭いは嫌い…だって、私を深い闇に戻させるから。



嫌な予感、嫌な胸騒ぎ…。



そんな戸惑いを隠せない葵の姿を部屋のソファーに座って口角を吊り上げながら見遣る骸。





なんで、なんで私、血まみれなの?なんで私は……武器である三節槍を構えているの?



しかも、槍も血で汚れている。




恐る恐る…自分の足元を見る為に目線を下に下げる。





『―――ッ!!!





それは、あまりに残酷な光景だった。
一人の男の子が地面に倒れ伏せ。
身体中は至る所が切り刻まれ白いカッターシャツを赤色に染められていた。


でも私が驚いたのはそんな事じゃない。






その血まみれの男の子とは―――



風紀と書かれた腕章を……腕に、付けていた…。
それはいつも私の側にいる人が付け、いつも私の前を歩き手を引いてくれる、彼の……













『…きょ……や…く……ん………』




雲雀恭弥のものだった…







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(なぜ、私は……貴方の血色に染まっているのですか?)



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