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59.首謀者と対面。




ザッ、床を踏み締めれば足元の埃が舞う。



古びた映画館の中でここはその一部なのだろう。部屋の中央でソファーに深く腰を掛けている影。

こいつが、首謀者か…。部屋が真っ暗なのと彼の背後にある窓から差し込む太陽の光で彼に影が差し込み顔が見えない。
しかし僕が追い求めた奴に違いはないな。
何故なら、彼はここに来るまでに倒して来た弱い草食動物達とは違う雰囲気を纏わせていた。
僕と同じ、肉食動物の匂いだ。




「ずいぶん探したよ。君がイタズラの首謀者?」

「クフフ…そんなところですかね。そして君の街の新しい秩序。」



男の後半の言葉にピクリと眉が動く。



「寝ぼけてるの?並盛に二つ秩序はいらない。」


並盛は僕の街であり、
僕の私有地だ。
秩序が僕である以上こいつはいらない。
それに君が新しい並盛の秩序?馬鹿げている。
僕ほど並盛を大事に思っている奴はいないよ。


君は並盛中の生徒を襲い、並盛の秩序を乱した。
そう意味を籠めて言ったつもりだったが。




「全く同感です。僕がなるから…君はいらない。」



どうやら彼にはそれが伝わらなかったらしい…。

イライラするよ。
だけど今はムカついている所じゃない。
僕がここに来たのは並盛の秩序を守る為と、もう一つ…





「それより、どこ?」


「ん?」


「ここに並中の女子がいるはずだ。」



葵を返しにもらいに…。



雲雀のその言葉に骸は分からない程度に小さく肩を揺らし反応する。
並盛の秩序と名乗る目の前の男の顔を良く見てみると、葵の記憶の中で見た男に酷似していた。何より、葵を求めている…。




「……なるほど。君が葵を拾ったのは本当のようだ。」


「!」


「クフフ…何故僕がその事を知っている?と言いたげな顔ですね。」




雲雀は確かにそれにも驚いたが……何故、こいつは葵の名前を知っている?と内心で呟いていた。


葵の情報は無いはずだ。彼女は戸籍が無く、作らせないまま僕の側にいさせたから。



それに、なんだ?
この男にさっきから違和感を感じるのは…。




雲雀は先程から感じる、胸に引っ掛かる違和感に戸惑っていた。何か、嫌な予感がしてならない。



「葵はどこ。彼女は僕のものだから返してくれない?」


「クフフ…君は実に面白いことを言う……。葵が君のもの?いいえ、それは違いますよ。」



今まで座っていた男がゆっくりとした動作で立ち上がる。
すると窓の光が暗闇に染まっていた男の顔を照らす。





「ッ!?」




「自己紹介がまだでしたね。僕はこの騒動を起こした首謀者であり、



――六道骸と申します。」






『私の名前…葵……六道、葵…。』




まさか…






『よろしくね…恭弥君……』




そう言って、恥ずかしげにはにかみ笑う葵の姿を連想した。




…六道骸と、六道葵……



昔…葵の口から聞いたことがある。
自分には、血を分けた双子の兄がいるとゆうことを。でも聞いたのは兄がいたとゆうことだけ。


兄と何故一緒にいないのか、葵はどこから来たのかは彼女は一切口に出すことは無かった。
けど、いつも葵は目を伏せ淋しげにしていたのを何度も見ている。


そしていつか、彼女はこう言っていた。









『私のこの髪型は……お兄ちゃんと、一緒なの…。』






そう言って頬を染め嬉しそうに、でも辛く苦しそうな顔をしていた。








「…そう…君が、葵の双子の片割れだね。」



同じ苗字、同じ髪色、同じ目の色、同じ……髪型。



骸は思ったより早く自分と葵の関係に気が付いた雲雀に多少驚いていた。



「おや?葵に聞いていたんですか。」


「……否定しないね。なら尚更、君を並盛の秩序なんかにさせられない。」




彼女にあんな顔をさせる奴なんかに、葵の側にいさせられない。
それに何より、目の前の彼は気に喰わない。
人の逆手を取るような喋り方、そして雰囲気。
何もかもがムカつく。






ちらりと骸を見遣る。



葵の双子の片割れ。彼なら何故葵をあんな顔をするのか、そしてあの人間不信な性格になったのかを知っているかもしれない…。
でもそれは。





「君を倒したあとに、じっくり真相を聞くとするよ。」





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(とにかく早く、彼女を探さないと…)


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