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55.帰らない彼女。





おかしい…。


一昨日の夕方、先に家に帰したはずの葵が家に帰ってこないまま姿を消した。




彼女に何かないようにと付けさせていた部下から聞いた内容だと、
一昨日の夕方、突然並盛公園の方に向かって葵が走り出したらしい。
その後を追うように彼も走り公園に着いた時には…



ちらりと机の上に置いてある見慣れた鞄を見下ろす。



彼が公園に着いた時には…彼女の姿は見当たらなかった。


この鞄を、残して…。





中を確認した所間違いなく、葵の鞄だった。



何処に行った?
なぜ僕の元へ帰ってこない?


嫌な考えばかりが頭を支配する…。
もしかしたらこの並盛に危害を及ぼしている奴らに拉致られたのかもしれない。



もしそうなら早く彼女を助けに行かなくては…。


きっと、怖い思いをしているはずだ。






葵ッ…





その鞄から目を背けるように瞼を降ろし、雲雀は家を後にした。




いつも僕の隣にいた君。

いつも僕の隣にいて君と歩くこの道に、






君はいない…





不安で不安で心臓が握り潰されそうだった。
こんな気持ちは初めてで、どうして良いか正直分からない。
彼女が居なくなる、そんな世界は考えられない。だって僕の世界に色をつけてくれたのは葵だから。





葵、葵……



瞼の裏に浮かぶのは花のように優しく笑う葵。鈴のような声で僕の名を呼ぶ君。




君がいないと僕の世界は色を無くしてしまうんだ。



それに約束しただろ?



どんな事があっても、

君が負けて僕から離れなくちゃならなくなった時でも……





僕がそいつを倒して、君を迎えに行くって……




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(だから、必ず迎えに行くから)



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