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52.伝えたい。




首の後ろが痛い…

なんで?


閉じている瞼を持ち上げると何時も見ている天井と違ったのが目に映る。



『!』



知らない天井に慌てて身体を起こす。
周りを見渡し確認すれば窓は割れて壁は剥がれ落ちている部屋に私はいた。


寝かされていたソファーらしきものも古いようだけど、周りのものと比べれば何故かこのソファーだけそんなに古くないように見える…。



身体を起こし足を床に付け立ち上がった。




『…!』



ふらっと立ちくらみがしたけどなんとか脚に力を入れて持ち直す。


ここは、何処なの?




殺風景でどこかの廃墟みたいだ。
確か自分は骸に会った後気を失わさせられて……それからの記憶は、ない。
多分、骸の手によりここに連れて来られた。





怖いっ…怖いよ……



腕を抱くようにして交差させ自分を抱きしめる。


この部屋はまるで"あそこ"を思い出しそうで、嫌でも思い出してしまう。
暗い、寒い、何もないッ……



嫌だッ、嫌ッ……




恭弥君!!




彼の名前を心の中で叫ぶ。
今すぐ彼に会いたい。
会って、あの安心する声で「大丈夫だよ」とその腕で強く抱きしめて欲しいッ…




骸と会ったことにより葵の頭と心の中は酷く混乱していた。
今更彼は何しに自分に会いに来たのか、



『(先に突き放したのは………貴方じゃない、骸……)』





会いたくなかった。
会いたかった。


二つの想い。
裏切った彼等に会いたくなかったとゆう気持ちと、
また兄に会いたかったとゆう気持ちが私を混乱させる…。




額に手を宛て目を閉じた。



頭が、痛いッ…




ズキズキと頭が割れるような痛み…。


部屋の壁に身体を預けるようにして覚束ない足取りで歩く葵。
脚が絡み、前に転びそうになったとき……





『っ……!ちーく、ん…?』


「葵…」



咄嗟に捕まれた腕の先を目で辿ると昔の面影を顔に残した、ちーくんがいた。
本当に、ちーくんなの?



『ちーくん…本当…に、ちーくんなの?』



震える手で千種の頬に触れる葵に千種は悲しげに眉を垂らしてから小さく頷く。
目の前の彼が柿本千種だと分かると葵は瞳に涙を溜める。


『な…んで……』




なんで私を、置いて行ったの?


そう訴えるかのように自分を見る葵に千種は眼鏡超しから胸を痛めた。



「…っ…葵!」



違う…葵、違うんだ…



俺達は…葵にそんな顔をさせたかったんじゃない。



目尻に涙を溜めて悲しげに俺を見る葵。






だけど、それはもう彼女に伝えることは許されない。



幼い頃に別れた…



あの日から。







「……葵、骸様が…呼んでる…」




ごめん。


君は俺に光を与えて癒してくれたのに。
俺は、君を悲しませてばかりで、何も出来ないッ…。




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