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48.並盛を襲うもの。





二人で家を出て歩きで学校に向かう。
その途中で見る学生達は何処か怯えており、異様に周りを気にしていた。

普段なら雲雀恭弥を恐れているんだろうと思うところだがそれは違い、皆別のある事件の事で怯えている。




『……、…。』


「葵が悲しむことは無いよ。全く、僕の学校に喧嘩売るなんてね…。」




最近起き始めた事件。
それは並中の生徒が急に襲われ始めたことだ。





最初は不良だけかと思われたその行為はランダムに行われ、並中の生徒を襲う。












一体……この並盛に、




―――何が起こったの?



不安な色に瞳を染めて僕の後ろに着いて来ている葵の頬に手をやり目尻にキスをする。



『ん…』


「大丈夫、君は…僕が守るから。」




だから葵は何も心配することは無いよ、と優しいテノールな声でそう言ってくれる恭弥君……。
その時の私はただ、笑顔で応えるしか出来なかった。




違う、




違うよ、恭弥君……。




不安じゃない、と言えば嘘になる。


でも、そうじゃない、そうじゃなくて…。




なに?この…不安を押し潰すような、恐怖とも違った気持ちは……






これも、あの夢が




―――原因なの?











学校に着くと校門の前には沢山の風紀委員がいてその中に草壁くんもいた。




「委員長!」


「様子は。」


「っそれが……」















――――――
――――





「ふぅん……減る所かその逆に、無差別に襲って来たか…。」



あそこで話す訳にもいかない話なので応接室に移動する。
委員長は椅子に座り葵さんは給湯室に行く。
俺はそれを見計らって今並盛の生徒が無差別に襲われている事を報告すると冷静な声だが委員長の表情は怒りに満ちていた。



愛校心が強いこの人は自分の並盛が汚されていく事が許せないんだろう。



「君達は引き続き情報を集め僕に報告しろ。」


「はっ!」




ピシッと背筋を伸ばし草壁は応接室を後にした。




「………。」



彼が出て行ったのを確認した雲雀はふぅと軽い溜め息をつく。



風紀委員に恨みがある奴らはこの並盛に沢山いる。だから風紀委員が襲われるのは別に可笑しくはないし前例もある……。しかし並中の生徒まで被害にあったのはこれが初めてだ。




それは何を意味するか…







『恭弥君……。』



愛しい声が横から聞こえる。
コーヒーを煎れてくれた葵はカップを持って僕の横に立っていた。



「葵……」



君のそんな顔は見たくない。



悲しげに、不安げに、苦しげにした君の顔ほど見たいものはないんだよ。



「そんな顔しないで。」


『でも……なんだか…嫌な予感がするの…。』



目を伏せてそう言う彼女の手からカップを奪い机に置く。
その手を掴み、力任せに引っ張って向かい合わせに膝の上に座らせた。




『ぁ……』


「僕のことは大丈夫。」


腰に回された腕が強まる。葵はその温もりに、彼の肩に頭を置いた……。






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(どうか、貴方が傷付くことがありませんように……)



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