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38.待ち人来たれず。





『………まだかな…。』



眉を垂らして膝に顔を埋める。




それは5分前のこと…。







チョコバナナも食べ終わり、恭弥君と手を繋いで人混みが少ない場所を歩いていた。




『草壁くん、それであの時顔を真っ青にさせてたの?』


「そうだよ。全く、書類の上にうっかりコーヒーを零すなんて…。」



書き直すの大変だったんだから…。と昔話をする恭弥君に私は笑う。



『クスクス……あ、』


「どうしたんだい?」


『………あれ。』



指を指す方を恭弥君が見る。



「あれは…。」




目の前を走っているのはさっき会ったばかりのボンゴレの人…。
誰かを追いかけているみたい。




「……ふぅん…なるほどね…。」



何か分かったような顔をする恭弥君。
私は分からず彼を見ていると恭弥君は私の手を離しその手は肩に置かれた。




「葵、僕はこれからあの草食動物達を追う。」


『……。』


「多分、沢田の前を走っていた奴は追跡中のひったくり犯だ。」


『!』




つまり、そのひったくり犯を捕まえに行くから…待っていろ、と…。



『わ、分かった……。』


「ごめん。危険かもしれないから連れてはいけない。草壁を寄越すから…。」




それまで此処で待ってるんだ。いいね?



頭を一撫でしてから彼は犯人を捕まえに走って行ってしまった。
私はただ、彼の背中を見送るだけ…。






そして、今だ。



人が多い道の外れの林の中にいる。
木に寄り掛かるようにして体育座りで草壁くんを待つ…。





早く、早く来て……




―ガサッ




『!だ、だれ……』



草壁くん?と震える声で身体を立ち上がらせ音のした方を見るが……





『!!』


「あれ?君、どうしたの?」




そこにいたのは、草壁くんじゃなかった…
知らない、男の人……





『………。』


「こんな所で…女の子一人じゃ危ないよ?」


『ぁ……。』



彼が一歩、私に近付く。身体が…震える。




ハッ……ハッ……



呼吸がッ、乱れる…



頭の中が……









いや…嫌!!




来ないでッ!!!!!!!!








「葵さんッ!!」



反対側からは走ってきたのか、額に汗を流しながら現れた草壁。

葵のいる場所にやっと着いた彼の目に入ったものは葵がガタガタと震え、そのすぐ近くには知らない男がいた。




「ッおい!貴様、そこで何をしている!?」



慌てて葵を背に隠す。
男を睨み付けるようにして見れば男は苦笑いをし、



「なにも。ただここら辺を歩いていたらそこで寂しそうにしていた彼女が目に入ったので心配で声を掛けただけですよ。」


「本当だろうな?」


「彼女に聞いてみるといいよ。じゃあ連れが来たみたいだし僕はこれで…。」


『………。』



にこっと愛想良く笑いながら林の奥に消えて行った男…。
草壁は今だ震えている葵が気になり本当に何もされてないですか?と聞く。




『ハッ…ハッ……ハッ…』


「!(呼吸が…)葵さん!深呼吸して、落ち着くんだ…」


『く……かべ…く、ん?』



その声に安心し、葵はゆっくりと喉に酸素を送る…。



『ハァッ…ハァッ…。』


「すまないッ、俺がもう少し早く来ていれば…!!」



頭を深く下げる草壁くん…やめて、貴方は悪くないの…




『ちが……ごめん、なさい。私が、こんな、だから………。』


「葵さん…。」



瞳を閉じて俯いてしまった彼女に俺は何も言えなかった。
葵は、確かに俺には心を開いてくれたが…。



委員長の様に、俺は六道葵とゆう少女を知らない。
あの人は、委員長は葵が何故人間不信になったのかは知っている。だが、俺は知らない。別にそれはそれで良いと俺は思った。
言いたくないのだろう。だから俺は何も聴かない。彼女が自分で話てくれるまで。
無理に彼女から聞くとゆうことは彼女にとって拷問だ。




俺では……この少女を救ってやる事も、気の利いた言葉を掛けてやることが出来ないッ。
あの人でなくては…!






「葵さん、行きましょう…」


『?』







「委員長の、所へ。」



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(葵には、委員長が必要だ。)


(草壁くんに…迷惑…掛けちゃった……)



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