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TITLE 36.チョコバナナとお詫び 「え?ショバ代?」 結局屋台の手伝いをすることになった俺は獄寺君からショバ代の事を聞く。 「はい。なんでもここいらを取り締まってる連中に金を払うのが並盛の伝統らしいっス。」 そっか、だからさっきから周りに屋台を開いている人達だけが騒いでるんだ…。 「(てか裏社会のぞいちゃってるー!?)」 とんでもない事を獄寺君から聞いたような…と思っていると背後からザッ、と足が止まる音。 き、来た!!? 勢いよく後ろを振り返ると見知った顔。いや、忘れられない顔が…… 「五万。」 「ひ、ヒバリさん――――――!!?」 目の前に現れた並盛最強の人。 ヒバリを見た獄寺はいち早く反応し喧嘩腰になり怒鳴る。 その瞬間、ヒバリさんの後ろでビクッと何かが動く。 「あ……」 ヒバリさんの後ろには、あの娘がいた。 紺色の浴衣を着こなし、間違える筈のない、右目に巻いてある包帯。 残された左目は不安な色に染まって眉を垂らしている。 「葵、ちゃんだっけ?君も来てたんだね。」 『……。』 「あの…怪我、大丈夫?こないだはごめん。」 『!……。』 話を掛けてみる物の……雲雀の後ろに隠れ固く口を閉ざし、一行に開こうとしない葵。 「……ねぇ。」 自分を無視し、後ろにいる葵ちゃんに話を掛けたのが気に喰わなかったのか眉間に皺を寄せ声も若干低めなヒバリさん。 「Σは、はい!」 「五万。」 「やっぱりショバ代って風紀委員に!?」 山本や獄寺君は、げっとゆう顔をさせ顔を青ざめる。 驚いている俺達を他所にヒバリさんは「活動費だよ」と言い、更に。 「払えないなら屋台を…………潰す。」 なんて恐ろしい事を清々しく言うんだこの人はッ!! 何も言わずサッと五万円を差し出す。 それを受け取ると「確かに」と確認をし、俺達から後ろにいる葵ちゃんに肩越しから視線を流し。 「…ねぇ。」 「はい!」 「んだてめぇ!まだ何かあんのか!」 「それ。一つ貰えるかい?」 「それって…チョコバナナを、ですか?」 いや、チョコバナナを売ってるんだからそれ以外無いだろうけどヒバリさんの 意外な言葉に変な聞き方をしてしまった…。 ヒバリさんは群れるのが嫌なのか葵ちゃんの一歩後ろで待ち、案の定、それ意外に何がある…と言いたげな顔で俺を睨む。 目を合わせたら終わりな気がして思わず目線を横に流すと葵ちゃんは両手を絡ませて下を向いていた。 良く見ると肩と手が小さく震えていて汗が頬を伝っている。 もしかして…… チラッと隣を見ると獄寺君も葵ちゃんを見ないで暗い顔で目線を下にやっていた。 やっぱり、あの事で二人とも……。 葵ちゃん、獄寺君の事嫌いになっちゃったのかな? 獄寺君はあの日の事を凄く後悔している様に見える…。 浴衣の袖で隠れてはいるが手首に包帯が巻いてあるのが目に映った。 きっと浴衣で見えない場所にも今だ癒えない傷が沢山あるのかもしれない。 「………。」 『…………。』 ………沈黙。 山本も眉を垂らして申し訳なさ気に葵ちゃんを見ていた。 俺も何も言うことが出来ずにいると手が葵ちゃんに向かって差し出される。え?とその手を辿ると俺の横に獄寺君がいた。 『ッ!』 葵はビクッとその手に驚き身体を強張らせ目を閉じる。 しかし身体に痛みは無く、ゆっくりと瞼を上に持ち上げると…。 『……?』 目の前にはチョコバナナ……。 その先を辿ると銀髪の人が目線を斜め下に向けて私にチョコバナナを差し出していた…。 『…。』 「…おらよ。」 『……。』 「これが欲しかったんだろ。」 『………。』 葵は後ろにいる雲雀に顔だけ振り返る形で見る。 不安げな葵の顔に気が付き雲雀は小さく頷く。 『……。』 震える手でそれを貰い、お金を出そうとするとそれより先に銀髪の人が 「その…こないだは悪かったな……。」 『…?』 「怪我、酷かっただろーが。」 あそこまでやる気は無かった、悪かった。と彼はもう一度謝る…。 『……、…。』 「それは詫びだ。金はいらねぇ…。」 『………。』 色鮮やかなチョコスプレーで飾られたチョコバナナ。それをしっかりと握りしめ頭をペコッと下げてから後ろで待っている雲雀の元へと翔けてく。 「あ…!」 ツナの言葉は彼女に届くこと無く、そのまま雲雀を後を追って人混みの中に消えて行った。 次→ 山(優しいのな獄寺!) 獄(うっせぇ野球馬鹿!!///) ツナ((顔が赤い…)) 獄(何時までもビクビクされてたら後味が悪りぃんだよッ!!) 山(獄寺あの子のことずっと気にしてたもんな〜。) 獄(ばっ!?な、何アホな事抜かしてやがる!果たすぞテメェッ!!) ツナ(わ――!お店壊さないでー!!!!焦) ―――― (……。) (貰ったのかい?) (…。)←頷く (…そぅ。良かったね葵。) . |