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35.屋台を廻ろう!





『わぁ……』



並盛神社に着いた葵はあまりの人の多さに唖然として周りを見渡していた。
その隣では自分の嫌いな草食動物の群れがいる事に不機嫌オーラ全開な雲雀。




『きょ、恭弥君?』


「なんだい?」



機嫌が悪かったオーラは一瞬にして穏やかなものになる。
不安だった葵は繋いだ手に力を込めるともう大丈夫、と言うかのように雲雀も握り返す。



「葵こそ大丈夫?人、沢山いるけど……隅の方に行く?」


『…うん。』



その言葉が有り難く、私は恭弥君と一緒に木がある隅の方まで移動をする。




『お仕事、いいの?』


「向こうの方には他の風紀委員を寄越してあるから僕等はこっちでやればいい。それより何か草壁に買って来させるよ。」


『Σえ!…だ、駄目!』



携帯を開いて草壁君に連絡を取ろうとした恭弥君の手に捕まり首を振った。



『草壁君に、め……迷惑かけたくない。私は、大丈夫…』


「…分かったよ。なら、一緒に行くかい?」


返ってきたのは言葉ではなく、柔らかく笑う葵の笑顔だった。
一緒に屋台を廻っていると物珍しげに屋台を見ては楽しそうに顔を緩めている葵。



「(可愛い…)」


『あ…』



しばらく歩いていると突然歩みを止めた彼女に前を歩いていた僕の足も止まる。
葵はある屋台をじぃっと見つめて動かないでいた。(周りにいた群れは僕等が来たと同時にいなくなった…)



彼女が見ている屋台を見てみると上に飾ってある看板には“チョコバナナ”と書かれている。



あぁ、あれが食べたいのか。甘い物が大好きな葵にはあれが魅力的に見えるのだろう。



「(目が輝いてるしね。)」



そういえばまだあそこからは活動費を貰ってないから丁度良い。
後ろで立ち止まっている彼女の腕を引いて屋台まで歩くと葵は驚いたように目を見開き僕を見る。




『あ、あの……』


「あそこからの活動費はまだ貰ってなかったからね。」



ついでだよ、と誰にも見せない笑みを浮かべ葵の手首を掴み行く。





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((あれ?あの人達、何処かで……))

(行くよ。)

(う、うん。)


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