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33.初めての浴衣。





あの一件から数週間が経った頃。私が負った怪我も大分良くなってきた。まだ腕や火傷を負った頬は赤身が差していて完全には治ってはいないが痛みはさほどない。



そして今日は年に一回の夏祭り。



ソファーでコーヒーを啜っている恭弥君の隣に腰を下ろす。



『今日、夏祭りだね。』


「そうだね。草食動物達が群れる日だ…。」



ふぁと小さな欠伸をしながら私の頭を撫でる。
今年も活動費を貰うのでしょうか…。



「葵、もうすぐ行くから浴衣に着替えてきなよ。」


『Σえ!……ゆ、浴衣に…?』


「去年は忘れてて着てなかったからね。今年はちゃんと着てね、浴衣。」


口角を上げて横で笑う雲雀。


イタリアにいた私はユカタ、とゆう物を知らなかったですが恭弥君にジャッポーネの事を沢山学びました。
とくに和風とゆうものが恭弥君はお好きみたいです。



『でも…浴衣は…』


「それならもう出しといたよ。」



当たり前なことを言うかのように言う恭弥君。
着せること前提ですか…。




「部屋に置いといたから着替えておいで。」



軽く背中を押され居間から部屋へと足を運ばせる。
部屋に入るとベッドの上に置かれた藍色の浴衣があった。


藍色の生地に銀とピンクの色をした桜の花デザイン。



とても綺麗で魅入っているとふっとお腹に感じた圧迫感。



「気に入った?」



後ろから抱き着くようにして葵の腹に腕を廻す雲雀。
すぐ横から聞こえた声にただ頷く事しか出来なかった。




頬が少し赤らんでいるから気に入らない、とゆう事はないだろう。
頬を赤らめている葵を見てクスッと笑いそのまま頬に口付ける。
くすぐったいのか肩をすくませる葵。



『これ、本当に…私に?』



首だけを後ろにやり僕と視線が合うようにして話す葵はやはり頬を赤らませ瞳を輝かせていた。



「他に誰にあげるってのさ。」


『…あ、』


「?」





『あ、ありがとッ!!』


頬を赤らめにこっと、本当に嬉しそうに微笑む葵の顔を、直に見てしまった。



「(その顔はヤバイでしょ……襲っちゃ駄目かな、これ。)」


『?』



お腹に廻された腕に一瞬だけ力が入れられるがすぐに離される。
後ろを振り返ると軽く額を弾かれた。



『ひゃッ!』


「フフッ…ちゃんとそれ、着るんだよ?」




僕も制服に着替えてくるから。と種を返し部屋から出て行ってしまった。恭弥君は浴衣、着ないのでしょうか?




『あ、着替えなきゃ…』


ベッドに置かれた浴衣を手に取り早速服を脱いで着る……が、





は、はぅ…これ、どうやって着れば良いのですか?
服を脱ぎ、浴衣を羽織って袖に腕を通したまでは良いのですが……そこから先の着方がわかりません!

袖を掴んで苦戦していると後ろで喉を噛み殺して笑う声が…。




「クスッ…まだ着れてないようだね。」


『着方……分からない…。』


「みたいだね。葵、浴衣は下着を着けて着るものじゃないんだよ。」




下着を着けたまま浴衣を羽織っている葵にそう言いながら彼女の前に廻って背中に手を回し下着のホックに指を掛けて外す。



『?』


「僕が仕立ててあげるから袖を持って腕を横に上げて。」



外した下着を指に掛けながらベッドの上にそれを置く。
袖を持ち、腕を上げている葵にそのまま着々と浴衣を着せて帯を締めていき、数分と絶たない内に終わってしまった。



「出来たよ。」


鏡の前でくるりと廻って見せる。
するとやっぱり、と雲雀は頷き。




「良く似合っているよ葵。」


『あ、ありがとう…//』


…口元に袖を宛て後ろを向いて赤い顔を隠しているつもりなんだろうが無意味だよ。
……寧ろ逆効果だ。



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(耳、真っ赤だしね。)




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