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27.選択。




葵の傷に障らぬようにゆっくりと身体を地に横にさせる。




「さて…。」


「「「!!」」」



ゆらりと立ち上がり、トンファーを構え口元を緩ませる。今の僕の心は冷めきっているだろう。
現に僕を見て面白いぐらいに顔を青ざめている草食動物達の姿。


ぐちゃぐちゃにしてやろうと二、三歩前に踏み出した途端。






「待て、ヒバリ。」


その高い聞き覚えのある声にピタリと草食動物に向かっていた僕の身体が止まる。
声のした方に顔を向ければ思った通りの人物が木の枝に座っていた。



「獄寺と山本が言っていることは本当だぞ。」


「赤ん坊…。」


「あ、あの…俺達があの子を追ってそこの角を曲がろうとしたら槍が降ってきたんです。」




赤ん坊に続いて口を開かせる沢田綱吉。



「……ちょっと待って。追っていた理由は後で聞くとして……まさか君達、この子の後を付けて来たのかい?」



そう聞けば彼等は首を小さく縦に振り頷いた。
なるほど……そうゆう事…。






「葵は気付いていたようだね。自分の後を追いかけている君達の存在に。」




付けていた事を気付かれていたとは知らなかった三人は雲雀の言葉に驚いていた。




「だがヒバリ、何故ツナ達に気付いていたならその女は攻撃をしたんだ?」



雲雀の後ろで倒れている葵にリボーンは目を向け、それに続いてツナ達も何処か遠慮がちに葵に見を向ける。
どんな理由であれ、あそこまで女の子に傷を負わせてしまったんだ。




赤ん坊の問いに構えていたトンファーを降ろし後ろにいる葵に目を向けながら話す。




「………君達に話す義理は無いけど。またこんな事されるのはごめんだからね。」


「話てくれるのか?」


「いくら赤ん坊でも詳しくは言わないよ…。それと葵の手当が先だ。」




ヒバリさんは葵ちゃんの側によると彼女の脇の下と膝の裏に手を入れて持ち上げる。



なんとなく、俺の予想だけど。



きっとヒバリさんはあの子を地面に横にさせておくのが嫌だったんだと思う。だって本当に大切そうにあの子を抱き抱えているヒバリさんは俺達が知っているヒバリさんじゃないみたいで…。


何時もトンファーを握って人を踏み倒して並盛最強と恐れられているヒバリさんは今、ここにはいない。


少なくとも……彼女の前だけでは…。




葵を抱え上げた雲雀を見てリボーンは小さく頷き、歩き出した雲雀の後をツナ達は距離を保ちながらついて行く事になった。




「僕はこの子を応接室に連れて行くから君達は屋上で待ってなよ。」


「でも俺達も…!」



葵の怪我が心配なのか一緒に応接室に来ようとする。




「僕と群れる気?」


「屋上で待ってます!!!!」



眼光を光らせるとすぐさま逆方向、つまり屋上へと向かって行った彼等を見た後にフン、と鼻を鳴らし応接室へ向かう。



葵を抱えて歩くと彼女の腕は力無く宙を揺れ動く。
本当は今すぐにでも葵を傷付けた彼等を咬み殺してやりたい。
だけどいつまでもあんな汚い場所で葵を寝かせておくのも嫌で、彼女の綺麗な身体に今も傷があるのが嫌だったから。





今はまだ、咬み殺さないでいてあげるよ。
君達を狩るより、葵の手当てが先だから。





腕の中にいる葵を見る。
僕を見る瞳は今は堅く閉ざされている。
真っ白な肌には似合わない火傷による傷や擦り傷、そして額から流れる赤い血。



怖かったのか、または血を流しすぎたせいか顔が青白い。








「委員長………!葵さんッ!?」



応接室に入ると頼んでいた仕事が終わって僕の帰りを待っていた草壁。


僕に目をやると真っ先に走り寄って葵を心配気な目で見る。
草壁にとって葵は妹みたいな感情を抱いていてそれなりに彼女の身が心配らしい。




「い、委員長…葵さんに何が……!」


「この子の手当てよろしく。傷を残すような真似をしたら咬み殺す。特に…………」






草壁に抱えられた葵の頬にある火傷に手をやり。














獄寺隼人はね。






低い声でそう言い。
草壁に葵を渡して応接室を出て赤ん坊達がいる屋上にへと脚を運ばせる。


調度あそこに草壁がいて良かった。
他の委員だったら葵を任せることは出来なかったし、それにどうも僕は手当てをする。とゆう作業は苦手だ。
僕は怪我なんかしないししたとしてもいつも放っておく。
葵が来てからは葵が手当てをしていてくれたけどね。



僕が手当てをするよりああゆう事に慣れている草壁に頼んだ方が良い。
僕がやって、葵の身体に傷痕を残してしまうのは嫌だ。
僕が付けた痕ならまだしも、他人に付けられたものなど見たくない。



葵も他の奴より見知って心許した草壁に手当てをして貰った方が安心すると思うし…。






屋上に続く階段を登り、古びた扉を開けると彼等は中央にいた。





「ヒバリ。」


「分かってるよ赤ん坊。だけどいくら赤ん坊でも詳しくは言わないよ。それは葵も嫌がるからね。」


「それでいいぞ。まず、あいつは何者なんだ?」




僕は彼等と群れる気はないから離れた場所で壁に寄り掛かり赤ん坊の問いに口を開かせる。





「彼女は六道葵。今から二、三年ぐらい前に突然僕の前に現れた。」


「現れた?」


「詳しくは言わない。」


「そうだったな。じゃあ最後の質問だ。何故、ツナ達に気付いていたのに攻撃をしてきた?見るからにあの女は戦いを好む奴には見えねぇ…。ツナ達の存在に気付いていたのならそのまま撒けば良かった。なのにわざわざ戦いを選んだ。」





赤ん坊の真っ直ぐな目が僕を貫く。
彼はどうやら葵の隠れた力に気付きつつあるようだ。




「さぁ…。だけど、人間不信で人が怖い彼女だからこそ、その行動を選んだのかもしれない。」





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(彼女は臆病だけど、逃げない。そんな子だ。)



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