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26.この子やったの…君達?





手榴弾は大きな音を奏でて爆発した。



だけどそれはあの子には当たらず、上空で爆発した。
何故真っ直ぐ葵に向かっていたはずの手榴弾が方向を変えて上空で爆発したのか…。
その原因を見たツナ達は顔を青ざめる。





「あ、」


「…随分……暴れたようだね。」




手榴弾が爆発する直前に黒いものが見えた瞬間、手榴弾は何かに弾かれたかのように上空へと飛んでいった。



突然現れた黒い何かが………並中の風紀委員長、雲雀恭弥がトンファーで手榴弾を上空へ弾いたからだった。




そして今の現状は雲雀が地面に膝を着き、倒れている葵の身体を右手で抱きしめて左手でトンファーを握っている。
雲雀はちらりと自分の腕の中で気絶している葵を見て。
トンファーを地面に置き、頭から血が流れて頬を紅く染めているその頬に優しく手を当て触れる。


泣いたのか、彼女の左頬には一筋の涙の痕と彼等との戦闘で負ったと思われる火傷があった。




このぐらいの火傷なら痕にはならないだろう。涙の痕を人差し指で掬い取っていると左顔に掛かっていた長い前髪がさらりと顔から滑り落ちる。

初めて会ったあの日以来の酷い傷だね…。
身体中に火傷や擦り傷を負った痛々しい葵の姿を見て雲雀は強く眉間に皺を寄せた。




「………ねぇ。」


「「「っ!!」」」




応接室や花見の時に感じた殺気よりも身体を刺す刺々しくて痛い、冷たい殺気にツナ達は身体を強張らせた。
顔に影が差していて前に聴いた声よりもその声は低く、細い切り長の眼光に含まれた怒気。




それは間違いもない怒り。




























「この子やったの……君達?」





鋭くツナ達を睨むその目は獲物を追い詰める肉食動物の瞳…。
ギラギラと眼光を光らせ更に殺気を放つ。



ツナ達は突然現れた雲雀に内心驚いていたのもあったが身体を容赦なく刺す怒気と殺気に身体が動けないでいた。




「っざけんな!先に襲って来たのはその女の方だぜ!?」


「何言ってんの。この子がそんな事するわけない。」


「いや、本当だぜヒバリ?急にその子がツナに襲い掛かってきたんだ。」


「言い逃れをしようだなんて僕には効かないよ。」




そう言って獄寺隼人や山本武の言葉に一切耳を貸さず、地面に置いていたトンファーを手に取りいつでも戦闘が出来るような体勢をとる。





雲雀はツナ達に対して怒気を放っていたのもあったが自分に対しても怒りを感じていた。


葵に傷を負わせ涙を流させた草食動物が許せない。


それと同じぐらい、自分に腹が立つ。





戦って傷付いていた葵に気が付かなかった。きっと彼女は助けを求めていた。
だけど性格上あの子は絶対に僕に助けを求めない。理由は知っている。



僕に迷惑を掛けたくないから…。


心の中で助けを求めても彼女は決して口には出さなかった。
弱音を吐かない。


人見知りは激しいが絶対に弱音を吐くような子ではい事は一緒に暮らしていて分かる。
涙だって滅多に流さない。よっぽどの事がない限り…。



その葵が涙を流して気絶していた。



涙を流すぐらい彼女は僕には分からない何かに怖がり、不安定な気持ちでいたんだ。
それに気付いてやれず、助けてあげられなかった自分に…どうしようもないぐらい腹が立つ。





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(彼女に傷を負わせ、涙を流させた罪は……重いよ。)


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