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10.↑雲雀視点。




彼女を拾い一週間が過ぎ、彼女は食べ物を口にしていなかった。
身体の怪我は大分良くなってきてはいるがまだ包帯やガーゼはとれない。栄養をとっていないから。水はかろうじて飲んでくれてはいるが食べ物は一切口にしていない。
このまま栄養を取らない身体はどんどん貧弱化してゆき死ぬだろう。






だから……




「ハァ……死にたいならそうすればいい。」


『………』



そう言って突き放した。そうしなければ自分の命が危ないとゆう事に君は気が付かない。





「死にたい奴を助けたりした僕が馬鹿だった。」


『……』




これは半分本当の気持ちだった。
ハァとまた小さく溜め息をつき彼女に背を向けて部屋を出ようと歩き出す。





『……い…』



小さな声に気が付き彼女の方に視線をやり目を見開く。




「……!」




ポタッと彼女の頬を伝って布団に落ちるそれ。
それが涙だと分かり身体こど彼女の方に向く。
流れた涙は止まらないのか静かに流している。




『あッ………』




初めて……彼女は僕の前で涙を流した。いや、初めて表情を崩した、だね。
いつも怯えた顔しか見せなかった君だから。







『置いて……かな…い……で…』




小さな声でそう言う彼女。
どこかで聞いたその台詞に僕ははっとする。



それは、ここに連れてきた時に彼女が寝言で言っていた言葉だった。


布団のシーツをきつく握り締めて顔を下に俯かせる彼女を見て失態した、と思った。
置いていかれる事を怖がっていた彼女。






『……置いて……いか…な…いで…ッ』




切ない声で壊れた機械のように繰り返すのを見て心が揺らぐ。



『……置い……てい…か…ない………で…』


「ッ!!」




そんな痛々しい彼女を見ていられなく、気が付けば彼女に走りよって腕を引き寄せ抱きしめていた。




『……?』




背中と細い腰に腕を廻して強く抱きしめる。
何も食べていない身体は細く、折れてしまうのではないのかと思うほど…。



「ごめん…」




悲しませてごめん。




「大丈夫。僕は此処にいる。傍にいるよ。」


『…!!………うっ…ふっ…』




ポンッ、ポンッ、と優しく背中を叩いてやると今まで我慢していた気持ちと心のストッパーが切れたかのように彼女は泣き崩れた。




『うぁああああっ!!』

















――――――
――――





「泣き止んだようだね」


すっと目尻を撫でればピクリと反応を見せる。


人前で泣いた事が恥ずかしいのか顔を胸に押し付けている彼女。





『……ごめんなさい…』


「?」


『貴方のこと信じて無くて……ご飯、作ってくれたのに…食べなくて……ごめんなさい』


「………雲雀恭弥。」


『え?』


「僕の名前は雲雀恭弥。名前教えてくれたら許してあげる…。教えて?君の名前。」





肩に手を置いて少し距離を持ち話す。
顔を俯かせていた彼女はゆっくり雲雀の顔を見て口を開く。
















『葵…』





『私の名前……六道…葵っていうの。』




やっと彼女の名前が聞けた…。




「葵…。僕の事は恭弥って呼んでよ。」





『…恭弥?』


「そうだよ、葵…」





――――――
―――






「あの時の君、かなり警戒してたよね」




昔と言っても一年前の事を思い出して小さく笑う雲雀に葵は困ったように笑い、





『だって恭弥君、マフィアを簡単に倒してしまうから一般人とは思えなかったんです…。新手の敵かと思いましたよ。』




眉を垂らして言う葵にふっと笑みを零し隣に座る。






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(貴方と会えたから…今の私がいる)





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