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8.何年ぶりかのありがとう。





『……おおきい…?』




彼が出て行った後にワンピースを脱いで渡された服を着る。
渡されたのは白いブラウスに黒いズボン。
ズボンはあまりにも長かったため引きずる形になったのでブラウスだけ借りることにした。



ブラウスもぶかぶかで腕の袖が長い…。





『………あの男の子……分からないよ。』




どうして見ず知らずの自分にここまでしてくれるのだろうか…。
やはり何か目的が?
マフィアのスパイで優しく接して私を騙してるとか?







……でも、何故だろう。彼の目がそれを裏返す。決して嘘をつくことのない真っすぐな瞳。
逆にこっちが見透かされてるみたいな、決心の強い瞳を持っていた。





沢山、醜い瞳を見てきたから彼とあの人達との違いが分かる。
今まで、見たことの無い綺麗な瞳をしていた。





すっと袖を軽くめくり、手当てされた腕を見る。綺麗に巻かれた包帯。




………彼はマフィアじゃないのかもしれない。
だってマフィアだったら…私のことを知っている筈だもの。治療なんかしなくても、あの力を使えば治せるって事を…。




……今はそれは出来ないけど。





でもマフィアじゃないとしたらあのマフィアを倒した時の強さと殺気は何?とても一般人が出せる殺気ではない。




やっぱり、敵?





思った瞬間先程の事が頭に過ぎる。




そういえば彼、無理に私に近付こうとはしなかった…?



あの時私が拒絶したらすぐに止まってくれていた。まるで私が人間不信なのを知っていたかのように……








『あの人……なんだか…雲みたい…。』




雲が掴めないように、


あの人の考えが掴めない。






どうして優しくするのか…。なんで此処まで、してくれるのか…。







『………ありが……とう…』



不意に先程男の子にかけた言葉を口ずさむ。
ふわりと気持ちが軽くなったのを感じた。





『ありがとう…なんて……何年ぶりに言ったのかな…』




膝に顔を埋めてゆっくりと目を閉じた。





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