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6.気に入ったから。




『……ん…』



暫くして小さく吐き出された声と布の擦れる音が聞こえて読んでいた本から目を離して机に置く。ゆっくりと重たげに開かれてゆく瞼。
まだ起きたばかりで寝ぼけているのか天井をぼっ―っと見つめている。




「起きたの?」


『………』



天井を見ていた目線を僕に変える。



『……!!』



数秒見つめた後、やっと頭が覚醒したようで大きな瞳を更に大きくさせて寝ていた身体を起き上がらせようとする…が、




『っ…』


「君、かなりの栄養失調と寝不足なんだよ?いきなり起き上がれる訳ないでしょ」




それにその傷だらけの身体じゃ尚更だよ。





『……』



怯えた顔で僕に警戒しながらも周りを見遣る少女の姿を見てかなり警戒心が強いと見える。
多分この少女はさっきのスーツを着た男達を探しているのだろう。





「あのスーツを着た奴らならいないよ。僕が咬み殺したからね。」



そう。この少女が気を失う前に邪魔な草食動物を片付けたのは僕だ。
少女も自分が気を失う前の事を思い出したようであっと小さく口漏らす。




『…………あ、なた…も…私を狙ってきた…マフィアなの?』

「マフィア?それってなんの遊び?それに僕とあの草食動物を一緒にしないでくれる。」




やっと彼女の声が聴かれたのは嬉しいけどあの草食動物と一緒にされるのは嫌だった。
彼女の怯えた顔と警戒心は緩まない。
よっぽど彼らに何かされたみたいだ。




今思えば身体は切り傷と掠れ傷と打ち身ばかりだった。それも奴らに付けられたのか。




「ねぇ、君は何者?」


『?』


「あんな時間に変な奴らには襲われてるし…」




すると怯えた顔しか見せなかった彼女が新しい表情を見せた。
目を見開いて驚いている。





『…あなた……マフィア………じゃ…ない、の?』


「だから違うって言ってるでしょ。」




こうも疑われると嫌で自然と眉間に皺が寄る。
それに気が付きびくっと身体を震わせる彼女を見てすぐに眉間の力を抜く。




『じゃ、じゃあ…どうし……て…知らない……私を、助けたの?』




尚も疑う彼女。
これは警戒心が強い所の話じゃない。








彼女は……




















人間不信だ。





「…そうだな。君のことを知りたくなった、気に入ったって言ったら?」


『え…?』




すくっと椅子から立ち上がり少女の寝るベットに近付く。



『!やっ…!!』



近付こうとすると起き上がれない身体を後ろにずらし壁際まで後ずさり拒絶する。
どうやら僕の考えは当たりらしい。彼女は人間不信で人が怖いみたいだ…。
触れようとすれば逃げる…ね。




「とにかく、服、此処に置いておくから着替えなよ。その汚い服じゃ僕のベットが汚れる。」



言われて気付き、着ている元の白が分からないぐらい汚れたワンピースを見据える少女。
そこで自分の至る所に負かれた包帯やガーゼを見る。






『これ…あなたが……やって…くれたの?』

「………。」



改めて言われると自分のした行動に恥ずかしくなりプイッと顔を反らす。



「……僕は一旦部屋から出るから…10分したら戻ってくる。その間に着替えといてね…」




気難しい顔を見られたくなくて扉を開けて出て行こうとするが。







『…あ、りが…とう…』




小さくて消えてしまいそうな声だったけれど、しっかりと聞こえた御礼の言葉。





「………僕が好きでやった事だ。君に礼を言われるような事はしていないよ。」





そう言い残し今度こそ彼女を残し自室を出た。






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