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TITLE 5.悪夢にうなされて。 「うざいんですよ」 やめて… 「ずっとうざかったんですよ。何かとあればお兄ちゃんお兄ちゃん、と」 やめて、 それ以上、言わないでッ! だって私達、ずっと一緒だったじゃない…! 二人で、ちーくんや犬ちゃん達と一緒に、頑張って来たじゃない! それなのに………どうしてッ… 「addio(さよなら)…」 いや!聞きたくない!!さよならだなんて言わないでよ…っ!!! 私、強くなるから!お兄ちゃんに迷惑かけないように、強くなるから!!だから、だから……ッ 『……置いて……いかない………で…』 ――雲雀said―― 家に連れ帰った雲雀は少女を自分のベッドの上に寝かせてやる。 「…………汚い……」 自分のベッドに寝ている少女の姿を見て顔をしかめる。 少女の姿ははっきし言って血と泥で汚れていて汚い。 自室を出て居間に向かった。 この家は僕しか居なく、両親は居ない。 二人とも海外で仕事しているから家には僕一人しか住んでいないからあの子一人居ても何等問題無い。 居間から帰ってきた雲雀はベッドで寝ている少女の身体をお湯で濡らしたタオルで拭く。 (……布団が汚れるからね…) ベッドに腰をかけて、彼女の汚れた身体をタオルで丁寧に拭き取ってゆく。 額、目元、頬、首、胸元、腕、脚……上から少しずつ汚れを拭いてゆき、一緒に持ってきておいた救急箱を開ける。 ガーゼに消毒液を滲ませて顔の傷を消毒していく。 (……柔らかい…) 初めて触れた異性の身体に少し戸惑う。 男の自分より細くて柔らかい身体…。 どうして……僕はこの子を家に連れてきたんだろ。いつもの僕ならあそこで倒れたのが女でも無視して帰っていた筈だ…。 群れる事や縛られる事が嫌いな僕が……何故、この子の身体を綺麗にしてあげたり手当してあげたりしているんだ…。 手当が終わり一息ついていると布団の中で寝ている女子が身じろぎをして夢を見ているのか眉間に皺を寄せ苦しげそうにうなされていた。 『………ッ……』 「?」 口を小さくパクパクさせて何か喋っているのが分かり、上半身を屈めて彼女の口許近くに耳を傾ける。 「なにを言っt…」 『……置いて……いかない………で…』 悲しげに彼女の口から吐かれたそれ。 ハッと口許から耳を離して咄嗟に顔を見ると彼女は寝たまま、静かに涙を流していた。 柔らかな頬に触れ、それを人差し指で拭う。 「…ねぇ、君は、誰なんだい?」 早く目を覚まして。 そしてその口から柔らかいあの声で、名前を聞かせて…。 キラリと光る涙を流して置いていかないで、と切なげに言う彼女を見て。 自然と口を開かせて… 「僕はここにいるよ。君を置いていかないから。」 そう言っていた。 そうか…。 何故僕が彼女を拾い、手当をしたのか、今その疑問が分かったよ。 初めて君を見た時から感じていた。 スーツを着た奴らを怯えた表情で見据えていた君。まるで自分以外の人の存在に恐怖心を抱いているみたいな。 そんな君を見て…… あぁ、僕がこの子を守らなくちゃいけないんだ、とそう強く感じたんだ。 次→ (この子を、他の草食動物達から守らなきゃいけない…) |