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虚と実とは…








前を見ると自分以外は誰もここに居なかった筈なのに前にはライオンみたいな獣と獣の上に乗っている小さな人がいた。
何かのイベントだろうか?と辺りを見回すがここには自分と前にいる人しかいない。




ぼーっと突っ立っていると獣の上に乗っている小さな人が呟く。









「ひとつ、虚とはなんぞや」


『なにを…』


「ひとつ、実とはなんぞや」





こいつら変…突然何意味のわかんないことを言ってるんだ?

意味が分からなく首を傾げて前にいる奴らを無視して通りすぎようとした……
すると急に背中に痛みが走り、顔と地がご対面。
つまり俯せに押し倒されたのだ。





『!!っ、な、に…』


「ひとつ虚とはなんぞや」


「ひとつ実とはなんぞや」



背中に獣の鋭い爪の前足を置かれて身動きが出来ない。首だけを後ろに向けて文句の一つや二つぶつけてやろうかとしたけど獣の上に乗っている奴が同じ言葉を繰り返す…





―― ミシッ


『あぅ…っ!!!』



手に力を入れたのか背中に重みが増し骨が軋む。



背骨が壊れるんじゃないかってぐらいの力だ。
冷や汗と共に血が額から顎へと伝う…。
押し倒された時にあの鋭い爪で額を切ったのだろうか…。足も怪我をしたのかズキズキと痛む。
杏雫は痛みに顔を強張らせる。
すると背中に置いていた前足をどけて杏雫の体を俯せから仰向けへと変えて杏雫の首を前足で押し当てる。




『ぅぐっ!!』


強い力で首を押さえられて息が出来ない状態だ。





く…くる、し!!



必死に酸素を取り込もうとするが叶わず終わる。段々と目の前が掠れてきて意識を失わないようにするのが精一杯だった。そんな杏雫の顔に一枚の羽が落ちてきた…


――羽?……なん、の?



何とかまだ意識がある杏雫は目を開く。
















――バサッ




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(天…使?)


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