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43.住む世界







「しっかよぉ〜。平八の声掛けがあってやっと決まったぜ。」


杏雫が部屋に入ると同時に一人の男性。40代ぐらいの男性がそう口漏らす。



「本当だぜ。後押しされて皆腹が決まった。」


「?なんの事ですか?」



皆が二人の言葉に頷いているのを見た与一は二人になんの事だと問いだす。



杏雫は話の邪魔にならないように静かに与一の後ろに座る。






「俺達だってこのまま妖を野ばらしにしとくわけにはいかねぇからな。いつか奴らを取っ捕まえちまおうと皆考えていた所を今回の話で腹を決めた、とゆう訳さ。所詮俺達人間とは住む世界が違う。ましてや共存なんぞ…」


『……ッ!!??』





そんな…だってまだ妖怪だって決まった訳じゃないじゃないか!




『そんなの、まだ妖怪の仕業だと決まった訳じゃないじゃないですか!』




気が付けば、そう叫んでいた…。皆や与一さんが驚いた顔でボクを見るがそんなの気にしてなれない。なにか、嫌だった。
まるで……、実際そうかもしれないが妖怪全てを否定している彼等の言葉が。
けど、それだけじゃない。


彼の二つの言葉が…心に、頭に残る。



住む世界。
妖との共存。





二つ共、今のボクにあるもの。ボクはここの住人じゃない。それにボクは人間で露草や空五倍子や………梵天は、妖怪。
異なった世界…妖との共存。




だけどボクは今、彼等と共に暮らしている。
違った世界、違った種族。それでも良いから彼等と共に居たいと、願った。



その気持ちを、否定されてるみたいで…嫌だっだ。






「杏雫…?」



心配そうに、不思議そうに僕を見つめる与一さん。






「ッ、じゃあ誰がやったとゆうんだ?」


『………ッ…』


「それを見つけるのが…俺達だろ?松さん。」





見かねた与一が松とゆう男にそう言う。
他の者も与一の言葉に納得したように静まる。





「それにもうすぐ太陽が沈む。今日はもう皆帰った方がいいだろう。」


『え?……あ…』



もうそんな時間だったんだ…………あっ!!
や、ヤバイ!!早く帰らなくちゃ!





『ごめん与一さん!!ボク今日は先に帰るね!』


「え?あ、オイ!!」





送っていくぞ?と言おうとしたがそれより先に家を飛び出して走って行ってしまった杏雫にふっと顔が綻ぶ。





変わった人だ。
見ず知らずの俺にここまで協力してくれて…。
励ましてくれて……



暖かい笑みを向けてくれて………






「!!な、なんだ……俺、どうしちまったんだ?」




早くなった鼓動に手を胸に宛てる。
心なしか、顔も熱い気がする…





俺………もしかして…


































††††




『た、ただい……まぁ』


乱れた呼吸で帰宅した。途中で帰り道が分からなくなりあれやこれやで迷いながらなんとか無事についた。





「杏雫!こんな遅くまで何処へ行っておったのだ?心配したぞ。」



すぐさま玄関まで迎えに来てくれたのは空五倍子。いつもボクを気にかけてくれている優しい妖。なんだかこそばゆいな…。やっぱり妖怪全てが悪い奴らなんかじゃない。

そう思うと頬が緩む。
逆に、妖怪よりも人間の方がボクは怖いと思ってる。




『ごめん空五倍子!心配してくれてありがと!』


「全く、露草といい杏雫といい……」


『露草?居ないの?』




そういえば朝から見なかったな…。



「まぁあ奴は昔から放浪癖があってな。勝手に何処かへ出掛けてしまうのだ。」


『空五倍子……苦労人だね』





はぁと深い息を吐いた苦労人の彼に苦笑い…。



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