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41.平八と名乗る男







『与一さ〜ん!』



なんとか屋敷から抜け出せたボクは与一さんの家の前に着き、中に向かって彼の名前を呼んだ。


杏雫の声が聞こえた与一は家の中から出て来て杏雫の所まで歩いて来た。

彼は申し訳なさそうにして頭をかきながらボクを見下ろす。



「悪いな杏雫、俺なんかの為によ…」



そう言うとやはり申し訳なさ気に顔を歪ませる与一さん。






『なんかの為に、じゃないよ』


「?」


『与一さんは自分の大切なものを…守りたいんでしょ?』


「…あぁ!勿論だ!!だがどうやって犯人を捕まえるんだ?なんも手掛かりが無いし…雲を掴むようなもんだぜ?」


『ん〜………』





与一の一理ある言葉に杏雫は考える。



確かに与一さんのゆう通り、犯人の手掛かりが全くと言っていい程見つからない。いや、見つかっていない…





『取りあえず庭を良く見てみようよ。何か手掛かりがあるかも!』


「そうだな。」



杏雫の言葉に頷くと与一は庭に入る。
庭の中心にあった太い木の所に行き、木の周りを二人で何か手掛かりが無いかを探す。



う〜ん……やっぱりそう簡単には見つからない…か、
杏雫がそう思い溜息を零すがその溜息を吹き飛ばすような声が聞こえた。



「おぉーい!与一ー!!いるかぁ〜?」



その声の主は庭の外から与一を呼ぶ男性のものだった。
聞き覚えのある声に与一は顔を上げ声のした方を向く。























「平八…平八かっ!?お前久しぶりだな〜!!」


「へへっ(笑)最近さ木戸屋の方が忙しくてな〜。所で聞いたぜ!おめぇも大変だったらしいな与一。」


「…あぁ。見ての通り、持って行かれちまったよ。」


「うわっ!ひでぇことしやがる……ん?オイ…与一。」




木の方に向けていた視線を与一の後ろでぽかんと立っている杏雫に気付き平八は杏雫を見る。
また、杏雫は平八と目があった事でびくりと身体を揺らす。





「お前……いつの間に異国の女性を嫁に貰ったんだ?」


「『よ、よめぇええっ!?!?』」


「え?なに…違うの?」


「『ちがうっ!!////』」



二人の息が合った行動と剣幕にたじろぐ平八。




「わ、悪かったよ;そう怒んなって二人共!(笑)」


「全く…平八は…//」


『あ、えと初めまして平八、さん?ボクは杏雫です。』


「あぁどうも!俺は平八ってんだ。さん付けは慣れてねぇから平八って読んでくれ!!」


『分かった。よろしく平八!ボクも好きに呼んでくれて構わないから!』



笑顔で握手して挨拶をする。
この平八って人…とても綺麗な目をしてる。汚れを知らない純粋な瞳だ。人当たりの良い顔をしている…。
裏表のない平八の笑顔に少し、羨ましいな、と思った。
あんな風に…ボクは笑えない。





「ところでよ平八、俺になんか用があって此処に来たんじゃないのか?」


与一さんが平八の方に顔を向けながら言う。
平八はそうだった!とゆわんばかりに、バッと与一さんの方へ顔を向ける。



「与一!お前犯人捕まえるんだろ?」


「!随分早い情報だな平八(笑)」


「まぁな!!そんでよ!街の皆に声掛けしといたから後で来れる奴は来てくれるってさ!!!」



にかっと明るい笑顔で言う平八。
与一さんも平八の言葉に凄く喜んでいた。





『(………ボクもそれは…嬉しい……人が多い事にこした事はない…けど………だけど、人が多いのは……)』







――― 怖いッ




まだ一人や二人だったらいいがそれ以上の人を目の前にするのはとても怖い…。









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