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TITLE 36.気付いてしまった想い 冷たい風が吹き今の時間帯を表す。 「もうこんな時間だね。部屋に帰らないのかい?」 身体を離しながら聞く。今日は色々とあり疲れているであろう杏雫への気遣いの言葉だ。 『……もう少しだけ……此処に居ちゃダメ?』 思い詰めた顔で俺を見る杏雫。 全く… しょうがないね 「はぁ…いいよ」 『ありがと(笑)………………?梵天は部屋に行かないの?』 隣から動かない梵天に杏雫は頭の上に?マークを浮かばせる。 梵天は真っ直ぐ庭を見ながら小さくまた溜め息一つを零す。(幸せ逃げるよ?) 「しょうがないから俺も付き合ってあげるよ。」 『(うぉう…!!出た……俺様思考(遠目))』 「何か言いたげそうだね杏雫?」 『いぃえ!!!滅相もございません!(コロリ)』 ふふっけどボクは知ってる…。彼の不器用な優しさに。梵天は鋭い…だからいつもと少し違うボクの隣にこうして何も聞かないでいてくれる。 その優しさが…とても嬉しいんだ。 だけど…不安定なボクの側にいてくれる梵天の優しさが………少しだけ…苦しい…。 嬉しいけど苦しい…。 その優しさが貴方を慕う心を増す…それが…苦しい…。 彼が好きだ。 けど彼を本当に好きになってもいいの?愛されなかったボクが?人に愛されなかったボクが人を愛せるのか? 気付いてしまったボクの心… 気付いてはいけなかったボクの心… 二つの気持ちがぶつかり合いボクを惑わす。 こんな気持ちになったのは初めてで余計にどうすればいいのか分からない… それに梵天が人間のボクを好きになってくれる筈なんかが無いよね… そうだ…ボクは何を勘違いしていたんだろ? ボクが彼を好きになったとしても彼が同じ気持ちになる筈がないんだ… それにボクはここの住人じゃない…いつかは向こうの……本当の居場所に帰らなくちゃいけない。 …ボクの居場所? 向こうにボクの居場所があったか? そんなの………ある訳がない… ある訳が……無いんだ! 向こうにも…此処にも……… 次→ |