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TITLE 32.犯人はダレだ? 与一さんの言葉にびくりと肩を揺らす。 『…そうなの!だからまだこの街の事をよく知らないんだ!!』 上手く、笑えただろうか? 「そっか、なら忠告しておくけど…妖怪には気を付けな。」 真剣な顔で言う与一さんに土管を突かれたような感覚に囚われた。妖怪、今自分はその妖怪と一つ屋根の下で暮らしている。心配してくれる与一さんには悪いけど……ボクは妖怪全てが悪いんじゃないって事を知ってるから。 ボクは信じてるよ、梵天。妖怪全てが悪いんじゃないってことを。 だって、貴方はボクを助けてくれた。悪い妖怪は人間なんかを助けたりはしないよね? 静かに瞳を閉じて短い髪が風に遊ばれている杏雫の姿を見ていた与一は一瞬胸が高鳴った。 っ!い、今はそれ所じゃないだろ!// 頭を左右に振り、思考を変える。 隣で頭に?マークを飛ばしている杏雫に与一は話を続けた。 「実はさっき…男が一人来て俺に教えてくれたんだ。毎晩この庭の策の上で妖怪が一匹木の様子を伺ってたってな!そいつが俺の木を奪ったにちげいねぇ!」 『だけど…瞬間を見た訳じゃないんでしょ?』 「……昨晩偶然俺も見たんだ。策の上に立って庭の木を見ていた人に化けた妖怪をな。直ぐに居なくなったがあの身のこなしは人間業じゃねぇ。」 切られた木の根元を撫でる。その顔は悔しさと、不甲斐ない自分に対する怒りを映していた。 さっき笑った時は笑顔が豊かで似合う人だなと思った。こんな素敵な笑顔を持つ人から笑顔を奪って大切な物まで奪った奴が許せない。例え人間だろうと妖怪だろうと、許せない行為だ。 『与一さん!!!』 「な、なんだ杏雫;」 急に叫んだ杏雫に驚き、目をぱちくりとする。胸の前で拳を握りしめて隣で座っている俺の目線に合わせてきた。 『捕まえよう!』 「…は?」 『だから捕まえよ!犯人を!!』 「えっ?!おまっ、それ本気で言ってるのか!?」 『本気も何も捕まえたくないの?犯人!!』 「!!」 強い杏雫の目に俺は揺らいでいた気持ちが… 「……手伝ってくれるか?杏雫。」 『もちろん!』 何故ボクがこの人、与一さんを放っておけなかったのか。 似ていたからだ。昔の独りだったボクに。 でもボクには紺がいたけど今の与一さんには傍にいてくれる人がいない。 独りとゆうものはとても怖い。誰にも頼る事が出来ず、誰にも必要とされずに生きていく。 その辛さを与一さんにはさせたくない。あんな思い…与一さんはしなくてもいいんだ。 次→ (あんな辛い思い…この人にまでさせたくない。) . |