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31.奪われた大木








『…寝れたかな?』



梵天が完璧眠ったと分かった後、ふーっと深い溜息をつく。
良かった。ちゃんと眠れたみたい(笑)
膝の上で静かに寝ている梵天の髪をいじる。
初めて結んでないのを見た。何時も髪を団子にして結んでいたからなんか新鮮に感じる。


こう見ると本当に彼は男なのか?と思えてしまう程に彼は綺麗な顔だ。
ずっと見ていたいと思ってしまう……。ずっと、彼の隣で…





『!!!////』



ばっ!何を考えているんだ!!
恥ずかしくなり梵天から顔を背ける。
〜〜っ駄目だ!この場に居られない!!外に出て気持ちを落ち着かせてこよう!今のままじゃ梵天に合わせる顔がない。
初めて感じた自分の欲に恥ずかしくなり今は梵天の傍に居たくないと思った杏雫は梵天が起きないように膝から頭を下ろして部屋を後にした。













屋敷を出て街を歩いていると、ある一軒の家の前で人が集まって何やら話し込んでいた。
家の主人だと思われる男が怒りを現すかのように拳を壁に力強く叩き付ける。




「チッ!またやられた!」


「またかよ?これで何度目だ?」


「あそこの浪田さん家、またみたいよ。」



「もうこれで何回目かしらねぇ。」





家の周りに集まっていた女性二人が調度ボクの目の前で話をしていた。
少し気になり耳を話に傾ける。




「けど今回は一本の木を丸ごと持っていかれたみたいよ?」


「あら、前までは二、三本の枝を落としていただけなのにね。」


「可哀相にね、浪田さんも。あんなに大事に育てていた木を盗まれるだなんて。あの人奥さんも子供もいないから育てている木を我が子の様に可愛がっていたから…」





二人の女性組は横を通り過ぎると角を曲がって行った。杏雫は家の庭で力無く倒れている男の人が気になり庭に入る。
庭には沢山の木があり所々酷く、無惨にも折られていた…。
一本の木に近付きそっと木を撫でる。
良く見るとこの木も枝を何本か持って行かれていた。




『………酷いですね。』


「!?……君は?」




ずっと俯いていた男は杏雫の気配に気付かなかったのか驚いた顔で振り返る。
彼の後に立っていた杏雫は隣に立ち彼の前にあるものを見た。
他の木に比べると立派な太い木が此処にあったみたいだが虚しくも切り倒されて持っていかれていた。





『勝手に入ってすみません。ここにある沢山の花を咲かせた木があまりにも綺麗で……』


「あんた…優しいな(笑)此処にある木は全部俺が育ててきたからな!あ、俺は浪田与一ってんだ。与一(よいち)でいぃ。あんたは?」


『杏雫。ボクも杏雫でいいよ与一さん。』


「宜しくな杏雫!にしても見かけない顔だな。髪の色も変わってるし……外国から来たのか?」




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