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30.膝枕







と、言いつつも結局は彼の昼寝に付き合っている自分。その昼寝に付き合わせた人物は壁に寄り掛かり、眠たそうな顔をしていた。
しかし寝る体勢があまり良くないのか眠たくても眠れないとゆう感じだ。




離れた場所でそれを見ていたボクは四つん這いで近付き彼の隣に座る。
それに気が付いた梵天は目だけをこちらに向け、何をしてる?と顔に出ていた。





いつもの様に壁に寄り掛かり眠ろうとするが何かが足りず、眠れなかった。
すっきりとしない気持ちに次第に苛々してくる。なんだ、何が足りない…?何が足りないというんだ。いつもと同じではないか。


不意に離れた所にいた杏雫が近付いて来るのが分かった。
そのまま俺の隣に座るとこちらを伺う様にして顔を見てくる。
俺は杏雫に何をしている?と目だけで伝える。いや、ここへ呼んだのは確かに俺だが離れた場所から急に隣に来た杏雫に疑問を抱く。そもそも何故俺は昼寝に付き合えと杏雫に言ったのかも疑問だ。
己で言った言葉なのに己の口から出た言葉とは思えない言葉が出た。
知らない内に勝手に口が動いていた。



『その体勢きつくない?膝枕する?』




平然と言う杏雫とは逆に梵天は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしていた。目を見開き杏雫を見つめる。
その間にも彼女は膝を叩きさぁ来い!みたいな体勢でいた。




『ほら早く!寝たいんでしょ!』


「あ、あぁ……」



やはり眠気には勝てず、少し戸惑いながらも杏雫の前に移動して身体を後ろに倒す。
柔らかいものが頭の下にあり気持ちがいい。
すると髪を下ろしていた頭が遠慮がちに撫でられる。そのゆっくりとした動作がまた気持ちよく感じた。その気持ちの良さに眠気が急激に襲ってくる。
眠気が襲ってくる中梵天は何かに気付く。





そうか。これだ。これが足りなかったんだ。
空いていた穴が埋まったような感覚にやっとすっきりとした気持ちになれた。
昨夜、…杏雫は知らないだろうがあの膝枕のお陰で俺は何時もよりも気持ちよく眠れた。それを身体が勝手に覚えていたのだろう。だから眠たくとも勝手に覚えていた身体が杏雫を必要として眠れなかったんだ。
杏雫の膝枕が足りなかったんだ……



だが、それだけか?
本当は他にも理由があったのではないか?
杏雫に出会ったあの日から俺は変だ。
最初はあいつに似ていた人間だからという興味本位で助けて此処に置いていた。しかし彼女自身を見ていくうちに心が惹かれていった。笑った時の笑顔、時々見せる悲しい顔、焦る時の顔、全てが頭の中にインプットされている。
杏雫とゆう存在が俺の中に入っていく。



なんだ…この気持ちは…?この気持ちの言葉を知らない俺はもどかしく感じた。まるで欲しいものが目の前にあるのに手を伸ばしても取る事の出来ないもどかしさ……。
この気持ちは……なんなんだ?






その考えの後、梵天は夢の中へと意識を飛ばす。
優しい手に頭を撫でられながら。




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