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TITLE 29.昼寝に付き合え 『んっ……あれ?』 窓から入ってきた眩しい朝日で目が覚めた杏雫は布団の上でちょこんっと座っており、まだ覚めない頭で考える。 周りを見れば見慣れた自分の部屋。 『(あれ?なんでボク…自分の部屋にいるんだろ。確か昨日は……)』 確か昨日は梵天の部屋にいた筈だ。それで倒れた梵天を膝枕してて…それで…… 口に手を宛てうーんと唸る。あの後自分は……… 『!寝ちゃったんだ!!』 馬鹿だっ!!!!なんでボクが寝ちゃうのさ!!(泣) でもボクが寝たとしたのなら…一体自分はどうやって自分の部屋まで帰ってきたんだ? ……ま、まさか! 身勝手にも寝ていたボクを不愉快に感じた梵天は空五倍子にボクを部屋に移すようにと頼んだのかもしれない。 『だとしたら空五倍子に申し訳ないことをさせちゃったな……』 後で謝っとこ(泣) 布団を畳み、横に置いてあった着物を掴み腕に通す。紅い帯を腰に巻き付け着替え完了! 部屋から庭に出て朝の空気を吸う。 『んーっ!今日もいい天気だ!』 庭で朝の日差しを浴びていると不意に後ろから声がかけられた。 「今起きたのか?」 『梵天!!』 耳慣れた声に振り返ると、朝方は寒いのかいつもは肩から着物をずらして着ているのに今は肩から羽織っている。 そして低血圧なのか少し顔色が良くない。 しかし低血圧だと知らない杏雫から見れば不機嫌な顔に見えた。 梵天……昨日の事怒ってる!? 『ああああの!!ごめんね梵天!!』 「?」 梵天に嫌われたくない…。ただその思いだけだった。今の杏雫には梵天に嫌われる事が何よりも怖かった。 杏雫が急に謝った理由が鋭い彼には分かったらしく笑いたい気持ちをこらえる。 「昨日のことかぃ?確かに君を運んで部屋まで行くのは辛かったね。」 ………え? 「この俺に運ばせるなんていい度胸だよ。」 じゃあ……ボクを部屋に運んでくれたのって空五倍子じゃなくて 梵天? ぼっーとしているとすぐ目の前にいる梵天が溜息を吐き、腕を組む。 「聞いてるのかぃ?」 『!!う、うん聞いてる!!』 どくん、どくんと激しく波打つ胸に杏雫は戸惑いを感じていた。今までに感じたことの無い気持ちに尚更戸惑う。 この胸の高鳴りは彼に始めて会ったときと同じだった。それだけじゃない、この着物を貰った時や彼が笑ったときの顔を見た時、彼の寝顔を見た時、彼がボクの名前を呼んでくれる時もこの胸の鼓動は早く高鳴っていた。この気持ちのまとめた言葉をボクはまだ知らない。 まだ言葉に出来ない気持ち。焦る中、答えの見つからない気持ちに胸が疼く。 「杏雫、この後は暇か?」 杏雫は梵天の問いに首を傾げるがすぐに首を縦に振り応える。 ?怒って、ない? 呆然とした顔でいる杏雫の頭に手を置き髪をくしゃりとする。 咄嗟に目をつむった杏雫は梵天の手が頭に触れている事に恥ずかしさと嬉しさの間にいた。 「なんだぃ…そのホッとした顔は。俺が怒っているとでも思ったか?」 図星を突かれうの字も言えない。どうして紺といい梵天といいこう鋭い人がいるかなぁ〜……(溜息) 『だって、不機嫌そうな顔してたもん!』 「それは俺が低血圧だからそう見えただけ。朝は弱いんだ。」 そう言い頭から手を離すと庭から屋敷内へと戻ろうとした梵天は言いかけていた言葉を思い出す。 「さっき…暇かと聞いたとき頷いたよね?」 『うん。』 「昼時になったら俺の昼寝に付き合え。」 『うん…ってはぁあ!?』 驚いてパニクっているボクに対して梵天はいい反応だねとか言っていた。 いやいや、いい反応とかそんなんじゃないっしょ!!!あなたボクをからかって遊んでいませんか?いや遊んでいるに決まってる!! こぉんのSがぁああぁぁあああ!!!!!(泣) 次→ |