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TITLE プレゼント 『これ……』 部屋についた梵天は部屋の中に入りボクも続いて中に入る。 床に座った梵天の横には見たことのない箱が置いてあった。 その箱を掴みボクの目の前に置く。 『?』 「開けてみるといい。」 なにか企んでいるかのような笑みを見せる梵天に少し寒気を感じたが勇気を持って箱の封を開け、ゆっくりと箱の蓋を持ち上げる。 『!!こ、これ……』 箱の中に入っていたのは綺麗な生地をした純白の着物に深紅色の帯に梵天のとは色違いの黒いズボンが入っていた。 慌てて梵天を見ると、 「君のその着物は鵺の血や引っかき傷やらで汚れていたからね。そんな汚い着物で俺の屋敷内をうろついてほしくなかったからね。」 『―――う、』 「?」 ― がばっ 「!」 暖かい温もりに包まれたのは杏雫が俺に抱き着いたから。 首に両腕を回され首筋には彼女の吐息がかかる。そして杏雫の口から重々しく開かれた言葉は――…… 『あ、あり、が、とう』 「………。」 声は裏返っており、身体はひそかに震えていた。 懸命にお礼を言おうとしている杏雫がなんだか小さく見えて、触れば壊れてしまうのではないかと…彼女が儚く見えた。 避けようと思えばいつでも避けられた。しかしそうしなかったのは……俺が彼女の温もりに触れたかったから? 『ご!ごめん!!』 凄い勢いで俺から離れると杏雫は元居た位置に座り直し、顔を下に俯かせる。 別に俺は怒ってないんだけど。 このままにしとく訳にもいかず声を掛けた。 「横に部屋がある。そこで着替えてくるといいよ。」 『……うん。ありがと//』 箱を持つと隣の部屋へとさささーっと入って行った。 杏雫は部屋に入り熱い顔に手を置く。胸を打つ鼓動が早い。なに、この気持ち。 紺に抱き着いてもこんなことなかったのに… 梵天に抱き着いたら凄く顔が熱い、鼓動が早くなる! でも、嬉しかったんだ。 梵天がボクに着る物をくれたことに。ボクの服が、ぼろぼろだったのに気付いてくれた彼の些細な優しさが……ボクは嬉しかったんだ。 『梵天?着れたよ。』 部屋に戻るとそこには空五倍子と露草もいた。 『あれ?二人とも来てたの?』 「うむ、先ほどな。おぉ!着物を梵からもらったのだな!良く似合っておるぞ杏雫。のぅ露草?」 「なんでそこで話を俺に振るんだよ。」 『え!似合ってない!?』 「んな事一っ言も言ってねぇーだろーがッ!(怒)」 「?杏雫。」 ぎゃーぎゃーと言い争っている二人を止めようとしている杏雫を呼び止めこちらに来させる。 「その黒いものは脱がなかったのかぃ?」 制服の下に着ていた首元まで生地のある黒いタンクトップの上に杏雫は梵天から貰った着物を着ていた。 何故それだけを残して着ているのかを疑問に抱いた梵天は杏雫に聞く。 『っ!こ、この服…気に入っているから捨てたくなかったんだ…』 「嘘だね。」 『!?』 「声が震えているよ。それじゃすぐにバレる。」 彼の言う通り、自分の声が思ったより震えていた。 小さく俯いてしまったボクに梵天は優しい声で言う。 「言いたくないのは分かった。話せる時が来たら話せばいい。」 そんな青い顔をしてる君から聞ける訳がないだろう? 「今日はもう休め。俺もそろそろ眠い。」 ボクの横を通りすぎると梵天は騒いでいる空五倍子と露草を部屋から放り出していた。 二人を部屋から放り出した後、梵天は糸が切れた様にそのまま床に倒れた。 『!?梵天!!』 梵天の頭が地につく前になんとか膝を滑り込ませることに成功。 梵天の頭を膝に置き、膝枕してる状態だ。 どこか具合でも悪いのかと顔を覗き込む。 「…スッー…スッー…」 『ね、寝てる?』 し、心配して損した!!! あんなに焦っていたボクが馬鹿みたいじゃないか!!安心しておもわず溜息が出る。 『………綺麗な顔…』 膝の上で寝ている梵天の顔を見てやろうと覗き込むが…かなりの綺麗な寝顔に驚く。まただ。また胸の鼓動が速くなってる。 気を紛らわせようと梵天の黄緑色の髪の一束に手を通す。さらりと絡む事なく指を通す梵天の髪。いつの間にか太陽は沈み、窓から差し込む月の光が彼の髪を輝かせていた。 次⇒ (この服は、ボクの戒めを隠すもの…) |