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塔が広いだけ!








屋敷に入ってからもう20分は経っている。



なのに、なのにだっ!!!何故ボクは今だに廊下をうろついているんだ!(泣)なに?また迷子?また迷子なのかっ!?いや、認めない、ボクは認めないぞ!!迷子になんかなってない!



「こんな所で何をしてるんだい?」



迷子じゃないと自己主張してると聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
ぎぎぎっと首を鳴らしながらゆっくりと顔を後ろヘと振り向かせる。
そこにいたのはボクを呼んでいた梵天本人だった。腰に手をあてこちらを見ている。




『梵天……(冷汗)』


「空五倍子から聞かなかったのかい?俺が君を呼んでいたこと。」


『き、聞きまし、た。』


「ならなにこんな所で迷子になってるのさ?」




呆れたようにため息をつく。



『ま!迷子になんかなってないよ!今から行こうとして…て……』



段々と小さくなっていく声は説得力がなく明らかに迷子になっていたのが手に取るようにわかる。




「そうかい?なら俺の部屋まで是非案内をしてもらいたいね。」

『冗談です、ごめんなさい。迷子になっていました。許してください。(泣)』




素直に言えば良いものを。まっ、素直じゃない奴を相手にするのは此処にも一人(露草)いるから慣れてるけどね。ふぅと息をつくと体をUターンさせる。




「何ぼっーとしてるのさ。置いていくよ。」


『!まって!!』




今置いていかれたらボクは今日一日中屋敷をさ迷わなきゃいけなくなる!!!!!(それだけは嫌だ!!)

必死な思いでいるのに前を歩いている梵天の肩が心なしか震えてるように見えるのは………ボクだけ?
そして心なしか声を殺しながら笑っている声が聞こえるのは………ボクだけ!?



『……あ、の?』


「くっ…くっくっ、」


『もう我慢しないで笑ったらいいじゃないかっ!//』


「あっはっはっはっ!!」


『って、本当に笑わなくたっていいじゃんかー!!』




腹を抱えて盛大に笑う梵天に完全に馬鹿にされてると分かった杏雫は顔を赤面させる。




「杏雫、君は本当に面白い娘だ。顔に出やすくてわかりやすい。」


『〜〜!そんな事よりボクになにか用があったんじゃないの?』


「あぁ。それは俺の部屋に来れば分かるよ。」


『?』




笑いが納まった梵天と杏雫はそのまま梵天の部屋へと向かった。




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