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TITLE 人間は嫌いだけど… 結局帰り道が分からないので露草と一緒に帰ることになった(助かった)。 彼の隣で道を歩いていると不意に声をかけられる。 「……お前人間にしては変わってるよな」 『杏雫』 「………。」 名前を教えたのに一回も呼んでくれない露草に怒りを感じもう一度、今度は名前を強調して言った。 『ボクの名前は杏雫』 「……杏雫…」 『そぉかな?あ、やっぱり露草も妖怪なの?』 「(こいつ!怒)……あぁ。あいつに何も聞かなかったのか?」 『……さぁね(笑)』 露草は隣で殺気を放っていたがボクをずっと無視してくれたお返しだよ。 『露草は人間に随分とこだわるね。』 「……当たり前だ。俺は人間が嫌いだ。弱い癖してでしゃばるし、自分達の過ちを俺達妖怪に押し付ける。それに……」 堪えるように固く握られた拳からは怒りと悲しさが伝わってくる。 きっと、過去になにかあったんだ。それは口に出来ないほどの苦しみ、ボクと同じで簡単に口に出して言えることの出来ない過去が…… 知らず内に露草の震えている拳を己の両の手の平で包み込んでいた。 「!」 『確かに人は弱い癖してでしゃばるよ。だけどそれはでしゃばってるんじゃない。弱い自分を隠したいから、弱い自分を強く見せたいからだよ……だけどそう思っているのは、人だけじゃないと思うけどな(にこっ)』 「……。」 『でも後半は許せないね。もしそんな輩が現れたらぶっ飛ばしてやれ!!!』 雰囲気台なし。 拳を胸の前で握りしめ、それはせこい!だの最低だのと口ぐさんでいる。 「………」 何言ってんだこいつ。 自分の同類をぶっ飛ばせだ?俺の言ってることを信じてくれるというのか? 人間じゃなく敵の妖怪の俺を… 「お前……、杏雫は俺の言ってることを信じるのかよ?妖怪の言葉なんかを…」 『うん。』 「…随分あっさり言ったなお前。」 『だって本当の事だからそんなに辛そうな顔をしてるんでしょ?』 「―――っ」 『本当に辛いことがなかったのならそんな顔出来ない。梵天もそうだけど貴方達いつも哀しい瞳をしている。どこか哀しみを秘めた寂しい目。きっと過去になにかあったんだね。』 杏雫はそういうと俺の手を包んだまま瞳を閉じた。 『だけど否定しないで。人間を、ボクを否定しないで。』 ぎゅっと包み込んでいる手に力が込められる。 本当に……変わった奴だ。何でそこまで……何で俺の事をそこまで言える? 人間が妖怪を信じるだなんてのはお前が初めだ。 いつも俺達妖怪は邪険にされ、厄介者扱いされ続けていた。 そんな人間を信じろと言われても今更どうやって信じればいい? 「……人間は嫌いだ」 『…っ』 「だけど…」 「だけど……お前は、別だ」 『!!露草……』 「別に意味はねぇからな!!//」 ばっと手を振りほどき先に歩き始めた露草。 その後ろ姿を見て何だか少しだけ、彼のことが分かった気がする。 『待ってよ露草!』 前を歩いていた露草に追い付き彼の右手を掴みポケットに入れておいたブレスレットを彼の手首に通してあげる。 案の定露草は何だこれ?と不可解な顔をしていた。 『それさっき町の店で見かけたんだ。気に入って見てたら店のご主人がただでくれたんだ!綺麗でしょ?』 「あ、あぁ。けど何で俺に?」 『ボクが持っててもその綺麗さは保てないと思ったの。でも露草だったらその葉の命達を生かしてくれると思ったんだ!ほら、露草って植物に詳しいでしょ?ボクの傷だって草の力で治してくれたし!そうやって自然の力を生かすことの出来る露草がこれを持つべきなんだなって思ったから。』 隣でそう言って照れ臭そうにはにかんでいる杏雫を見て露草はこいつ人間にしては案外考えてるんだなと思っていた。 ……人間から、誰かから何かを貰ったのは初めてだ。なんとも言い表せない気持ちがあり、こそばゆく感じる。 右手首に通されたものをじっと見る。 それを隣で見ていた杏雫は露草が気に入らなかったのだろうかと焦っていた。 『あ、でも無理にとは言わないから!嫌だったら外しても……』 ブレスレットを外そうと露草の右手に手を伸ばすが右手を掴む事もなく宙を掴む。杏雫に手を掴まれる前に露草は己の右手を上に持ち上げていた。 ぱちくりと大きな丸い目を見開いて驚いた顔をしている杏雫に言う。 「お前が言ったんじゃねぇか。全ての物には命があるって。俺は草を大切にしない奴は嫌いだからな。」 だから…… 「貰ってやるよ!しょーがねぇーからな!!」 『……素直じゃないね』 「てめっ!置いていくぞ!?(怒)」 『照れ隠し?(笑)』 「…………。(怒)」 『あぁ!無言で歩くスピードを速めないでー!!(泣)』 早歩きで行ってしまった露草を追い掛ける為に駆け足で彼の背中を追い掛けた。 次⇒ (照れなくても良いのに…) (だから照れてねーって言ってんだろぉがッ!!) |