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拾われた人間










土手の木の上で一眠りしていた露草は隣の木の方から人の気配がして跳び起きる。こんな所に人間がなんの用だ?
木の枝に隠れて様子を伺う。
隣の木の下には二人組の男が突っ立っていた。



「兄貴、この木が?」


「そうだ。この木を切って金持ちの家に売り付けるのさ。この木は長年生きてきた上等な木だぜ。高く売れる。」


「…!!」



な、あいつら!!あの木を切り倒すつもりかっ!!?
そうはさせねぇ!!!!
風呂敷から斧を取り出した男達を追い払おうと木から降りようとするが、ある人物が木と男達の間に入り込んできた。





『オッサン達!!何しようとしてるのさ!』


「あ、あいつ」



梵天が拾ってきたあの女が木と男達の間に入り込んできた。
なんであいつがここに…




「あぁん?何だぁこの小娘。変な身なりしてやがる。」


『み、身なりは関係ないでしょ!それよりオッサン達この木を切り倒すつもりだろ!』


「てめぇには関係のないことだ!」


「その綺麗な顔に傷を付けさせたくなきゃさっさとそこをどいて家にでも帰れや嬢ちゃん。」


『この木だって生きてるんだよ!それをあんた達みたいな金儲け目当ての奴らに切り倒されるなんてこの木だっていやに決まってる!!』




― ピュッ



「!!」


『…っ!』



あの女の頬に一直線の赤い線が刻まれる。
男の手を見ると脇差しぐらいの刀が握られていた。




「ほらみろ、さっさとそこをどかねぇから綺麗な顔に傷がついちまったじゃねぇか。」


「もう一度言うぜ?そこをどけ。」




傷口から赤い液体が流れ女の頬を伝い水滴となって地に落ちる。
しかし女は切られたのにも関わらず顔付きを変えずにずっと目の前の男達を睨み続けていた。
両の手を広げ木を守るみたいにして。




『ヤダ。』


「!!そうかよ!なら力付くでもそこをどいてもらうぜ!!」


「!馬鹿かあの女!!」




流石にヤバイと思い木から降りようとするが降りる前に女の動きの方が早かった。




どかっとゆう音と共に一人の男が吹っ飛ばされる。
もう一人の男は呆然として女を見ていた。
俺も驚き呆然とその有様を見ていた。



女は構えをとり腰を低くして口を開く。




『小娘だからって甘くみんなっ!これでも武道はやってるんだから!!この木には近づけさせない、アンタ達こそさっさと消えろ!!!』


「…っ!覚えときやがれ!!」




なんとまぁお約束な言葉を吐きながら立ち去っていく男二人組。
その姿が消えるまで見ていた女は後ろにある木に向かって良かったね、と言い微笑んでいた。
あんな人間を見るのは初めてだ…




―― すたっ



『―!……あ、』



知らず内に女の目の前に降り立っていた。
女は俺を見ると目を見開く。




『え、あ、あれ?君、上?え!?』


「意味わかんねぇ。」



木から降りてきた俺に驚いているのかテンパっていて言葉が分からない。
多分どうして俺が木の上から降ってきたのかを聞きたかったんだと思うが←(当たっている)
俺は疑問に思っていたことを女にぶつける。




「お前さ、何でこの木を守りたかったんだよ?別にお前には関係ないだろ。」


『関係なくない!!!』


「!?」




屋敷に居るときとは違う顔付きで怒鳴る女に今度は俺が目を見開く。
女は木に手をやると静かに目を閉じる。





『木や草があるから人間は生きていける。酸素があるから人は生きていける。その酸素を作ってくれているのは大地や自然だ。だけどその自然だって生きている。だから木は花を咲かせ植物は実を実らせる。人は皆そのことを忘れちゃったのかな……。』


「………お前が……忘れてないから…良いんじゃねぇか?」




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