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ここでしか…








此処に居座っても良いと主の梵天に言われてからもう二日目になる。
此処にお世話になる訳であり、出来る限りの家事はするつもり。この家に住む以上此処の住人とは仲良くなりたい…。

特に……




『あ、おはよう(笑顔)』



廊下で、二日前に目覚めた時に縁側に居たあの少年とすれ違う、が……。




「…………。」




何も言わず横を通り過ぎて行く。まるでボクの事は無視。


ふかーい溜息が零れる。
そう、まだこの三日間彼だけとはまともに話すらしてないのだ。話したのは最初のあの会話だけ。
梵天が彼は人間が嫌いなだけ。と言っていた。
それ以外彼の事はあえて聞かなかった。
ちゃんと彼の口から名前や彼自身の事を聞きたかったから。だからまだ彼が人間なのか妖怪なのかは分からないけど、人間が嫌いって事はやはり彼も妖怪なのだろうか―……




『!……本当に変なの…ボクが他人に気を遣っているなんて…。』




だけど…仲良くなりたい、なんでか分からないけど梵天やあの少年を放っておけない。



いや……放っておいてはいけない様な気がする。
心の深い場所で、そう訴えているんだ。







―――――――
――――





「梵、杏雫と露草を放っておいて良いのか?」


縁側の策に手をかけ外を眺めている梵天の少し後ろで空五倍子が気になっていた事を話す。




「放っておけ、杏雫が望んだ事だ。」


「しかし露草の奴が人間の娘に気を許すものかどうか…。」




なにか仲を取り持つ方はないのだろうか……




うんうんと後ろで悩んでいる空五倍子の言葉にふっと笑いが零れる。それと同時に一風の風が頬を撫でた。




「心配するな……杏雫を嫌ったりは出来ないよ。あいつは……露草はな。」


なにか確信めいた声で言う梵天に疑問が湧く。



「その自信は本当に一体何処からくるものなのか(溜息)しかしそれはどうゆう意味だ?」


「さてね。」


「…また何か考えておるのか?」


「………。」



真剣な顔で言う空五倍子に梵天も真剣な顔になる。




「梵、我は疑問だらけだ。一体あの娘、杏雫は何者なのだ?」


「……。」


「他人に興味のないお主が人間の娘を助けたのには露草だけではなく我も不思議で仕方がない。何かあの娘にはあるのか梵?」


「少し…気になる事があってな。」


「気になる事とな?」


「あぁ。それに杏雫はもう“ここ”でしか生活が出来ないって事は彼女を治療していたお前が一番分かっている事なんじゃないのかい?」


「うむ。その事なのだが言わなくても良いのか?本人に。」





空を見ていた目線を下に向け庭で突っ立っている白い者に目をやる。















「今はまだ言わない方がいい。言ってしまえばただですら混乱してる気持ちが崩れるだろうね。その現実はまだ受け止めきれないだろうな。時期が来たら俺から話すさ。」




そう、君が失ったものは左目だけではなかった。




君はその現実を受け止めきれるかい?



今みたいに笑顔でいられるか?





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(今話せば君の心は割れるだろう…)





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