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傍にいさせて









『………っ!見える…見える、よぉッ?!?』



目を開けば両目に映る梵天の顔。
いきなりの彼のドアップに驚き声が裏返ってしまった。


近い近い近い近い!!!!(焦)
顔が近いよっ梵天さん!!(泣)鼻と鼻がくっつきそうな程の短距離。





「何をそんなに驚いているんだい;」




驚きたくもなるわっー!!!!そんな美形な顔が目の前にあること事態が驚きだよ!大体ボクは紺以外の人とはまともに話した事なんてないんだからな?!
今この部屋にいてあんたの目の前に平然といられる事でも不思議なぐらいだよ!(泣)

最後に言った言葉にボクは思考を変える。


不思議といえば…なんでだろ、この梵天といる時間がボクにとっては嬉しいような…楽しいように感じるのは……。



そんなボクの気持ちにに気付かないようで梵天は立ち上がるとボクから離れると背を向けたまま口を開かせた。












「目が治ったなら早くここから出て行きなよ。」



え……


何故かヒュッと喉が鳴る。




「もう傷も癒えたたんだ、此処に居る必要はなくなっただろ?」



確かに…傷も癒えたし目も見えるようになった……紺にも会わなきゃいけない、捜さなきゃいけない……………だけど……。
























「!!…………なんのつもりだい?」





部屋を出ていこうとした彼の着物の裾を杏雫は咄嗟に掴んだ。その時梵天に言われるまで自分が何をしているのかがわからなかった…ただ体が勝手に動いて彼の裾を掴んでいた。
何故ボクは彼を引き止めた?紺を捜したいんじゃないのか?
紺を捜したい気持ちは本当だ……



















だけど………っ!







『助けてもらったのにその恩を返さない程ボクは落ちぶれてなんかないっ!!』



だけどボクは貴方の傍に居たいと思ってしまっている。
しかし助けられた恩を返したいというのもまた事実。それは助けられたときから決めていたこと。変な矛盾ばかりだ。
けど…なんでかな、恩を返すより彼の傍にいたいと願ってしまうのは―




『だから!貴方の傍に居させて下さい!!それにこの世界では知っている人が梵天達しかいないんだ!ここを出ていってもボクには居場所がない!!此処に置いてくださいお願いします!』





掴んでいた裾を離して頭を下げる。
梵天は杏雫の口から出た言葉に目を見開き驚いた顔をしていた。


杏雫自身も己の口から出た言葉に驚いている。疑問ばかりだ。だからボクはあえてここに残ることを決めたのかもしれない。
梵天の傍にいればこの不可思議な気持ちが分かるかもしれない。




紺、ごめんね。貴方と会うにはまだもう少し先の事になると思う。本当なら今すぐにでも紺を捜さなきゃいけない。
でもボクは彼を残してここを出る気には…どうしてもなれないんだ。
彼の瞳には隠してはいるけど少しの寂しさと悲しさが見え、昔のボクと同じ雰囲気を纏っていた。





いつまでも頭を下げている女に梵天は口を開く。








「……―――」





そして彼が出した答えとは――




―END―




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