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梵天と名乗る者








『つまりここはボクがいた世界じゃない?』


「そう。俺はここを雨夜の月、ありえないことが起こる所という意味を込めて“あまつき”と呼んでいる。そして姫はあちら、つまり君が居た彼方の国を“彼岸”と呼んでいるようだよ。」


『うぁ〜…頭がこんがらがってきた(泣)じゃあボクを襲ってきたあの変な生き物は一体何者なの?』




ここがボクの居た世界ではない事が分かった。ここに閉じ込められたという事も理解できた。
しかしあの変な生き物についてはまだ分からない。何故襲われたのがボクだったのか、何故ボクの左目は視力を失ったのか………。




「下にいた獣は鵺とゆう妖怪だ。妖怪はごく一部の奴にしか見えない。だから見えるお前が襲われた。上にいた小さい奴は夜行とゆう。お前の左目は鵺の血が入りすぎて視力を無くしたようだな。」



言い終わると男の人は壁から離れて、後の細かい話しは君の傷が癒えてからにしよう。と言うと男の人は部屋を後にしようとする。

ボクはまだ一番に聞きたい事を聞いていない事に気付き、彼が廊下に出た瞬間に口を開く。












『ボクは杏雫、貴方はだれ?』





男の人は背を向けたまま立ち止まり、肩にかけてある衣が風に吹かれぱたぱたと音をたて揺れる。
どうしてかその音が心地よく感じた…

























「梵天、そぅ呼べばいい。」



短い様で長い沈黙の中から彼は答えてくれた。
それが何故かボクは嬉しくて顔が緩む。
やはり彼は優しい人だ。悪い人ではない。





『助けてくれてありがとう…梵天(にこっ)』


「!」


『助けてくれてありがとう…――』





「………同じ事を言う、か。」


『…ぇ?』



ぼそりと何か呟いたがあいにくボクの耳には届かなかった。なんて言ったんだろう?



「いや、早く傷を治しなよ。そしたら君の目を見える様にしてやる。」



『本当?!うん!ボク頑張って傷治すよ!!』



さっきの疑問など忘れてボクは喜ぶ。
梵天はそれを聞くと何処かへ行ってしまった。
杏雫はそういえばどうやって視力を戻すのだろうと一人考える。しかしまた別の考えが脳を横切った。





…変なの…ボクは梵天と初めて会った筈なのにもう気を許してる。
いつものボクなら仲良くはしても必ず一線は置いていた。壁を作っていた筈なのに……なんで気を許してるんだろ?
“あの日”からボクは紺以外の人には壁を造ってきた筈なのに…。
今はその紺も側にいないく不安は深まる、
























『紺……何処にいるの?』



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(不安で不安で…眠れないよ)





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