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夜行と鵺










バサッと翼を広げて地に降りる。後ろに空五倍子を残して俺は夜行達に近付く。
女は押し倒されているが顔だけをこちらに向けるとゆっくり口を開く。





『ひ……と…?』


いや、それ以外に何に見えるってのさ。
と心の中で毒つくが今はそれよりこいつ(鵺)か……







「奇妙な気配を感じて来てみれば君達か夜行……随分とそこの娘にご熱心なだけど…でも俺もその娘に用があるから………君には渡さないよ。」




にっと口角を吊り上げたと同時に空五倍子が鵺の首を跳ねる。
夜行も斬ったつもりだったが奴は逃げ足が速い為斬れなかったか……






「相変わらず逃げ足だけは速い奴だ…」




女に視線をやると両目に鵺の血が入ったのか目を閉じたままだったが、俺の声を聞いた途端に傷だらけの身体をゆっくりとこっちに向けて目を少しづつ開けてゆく――










驚いた……髪だけでなく目の色までアイツと同じ蒼なんて………。
これはもう偶然とは言えないな。この女は……アイツとなにか関係があるのか?







そう思いながら女を見てるとこっちに向けていた顔を鵺の方へ向ける。
するとぐらり、と女は突然倒れた。





「おい、」



俺は女に近づき声を掛けるが多分助かった安心感で身体の不安と緊張した糸が切れたんだろう。

梵天は小さく溜息を吐くと傷だらけの身体を持ち上げる。
後ろにいる空五倍子にこの女を連れて帰ると言うと案の定騒ぎだす。




「梵!そやつ夜行に襲われていたとはいえただの人間ではないか!連れ帰ってどうするのだ?!」


「五月蝿いそれ以上無駄口たたくと君の自慢の羽を毟(むし)るよ?」





一瞬にして黙る。
顔の青い空五倍子を無視して早く帰るよ、と告げると慌てて俺と女を抱き上げ翼を広げ家に向かって飛び去った。




END



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