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小さな、出会いだった。
日曜日。
小学校は休みで朝から並盛の見回りをしている雹。
彼女の服装は黒いタンクトップに白いジーパン。
長い漆黒の髪は彼女が歩く度にゆらゆらと左右に揺れる。
小学生とは思えないほど綺麗に整った顔は誰もが振り返るほどだった。
腰まである絹の様に美しい髪。
そしてアメジストの様に輝く切り長い瞳。
『今日はこの辺でいいか…。』
ふぅ、と息を吐く。
一通り街を周り、朝と昼の見回りは終わった。
後は夕方にまた見回りをすればいい。
家に帰って来た雹は扉に鍵を差し込み開けようとした瞬間に異変に気が付く。
―鍵が…開いている?
確かに自分は家を出て行く前に鍵を閉めたはず。まさか、
帰ってきたのか?
眉間に皺を寄せながら扉を開ければ玄関には靴が置いてあった。
その靴を見て更に雹の形の良い眉が吊り上がる。
雹は靴を脱ぎ、彼等がいるであろう居間に向かう。
居間に続く扉を戸惑いもなく開ければそこには見知った顔が一つ。
「あ…雹、ちゃん」
『…何してるの。』
雹が帰ってきたことに気が付いた母親は雹の顔を見て久々に娘に会えた嬉しさと、彼女の殺気に怯えたような顔をしていた。
「久しぶり、ね…元気にしていた?お母さんもお父さんも雹ちゃんが心配でn…」
『何しに来たのって聞いたはずだけど?』
雹の紫色の切り長な瞳が母親である女性を鋭く睨む。
女性はびくっとその眼光に怯えたかのように身体を震わせた。
それほど雹の威圧感は強かった。
「あの…ね、お母さんとお父さん…これから仕事でまた遠くに行かなくちゃいけないの。」
『……。』
「それで…あの子まで連れて行ける場所ではないから……」
目の前の女性の不可解な言葉に雹は首を傾げる。
゙あの子゙とは?
『……あの子?』
「えぇ、雹ちゃんの弟よ。」
知らない事実に雹は目を見開く。
自分の知らない間に弟が出来ていた。
それとは別に雹の怒りがふつふつと沸いて来る。
その間にもあの人はその弟やらを呼んでいた。
「恭ちゃん、こっちにおいで。」
庭に向かってそう呼ぶと小さな男の子が顔を覗かせる。
自分と同じ黒髪。唯一違うのは瞳の色。
「まま!」
名を呼ばれた男の子は嬉しそうに目の前の女性の足に抱き着く。
女性も柔らかな笑みでそれを受け止める。
「恭ちゃん、このお姉ちゃんが前に話した、あなたのお姉ちゃんよ。」
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(笑顔で自分を姉だと言う彼女に、吐き気がした…)
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