幻覚の内臓 (1/2)





― ピーポー ピーポー



耳に鳴り響く救急車のサイレンの音。
あれは事故に合って、目を覚まして少しのことだった……





「お父様ですか?」


「いいや。私は血は繋がっておらんよ。」



血の繋がりのない父、母親の再婚相手の人。
形だけのもので家族らしいことなんてしたことが無かった。





「あなた!透が交通事故で!!」


「容態はどうなんだ?」

「……駄目ね。右目と内臓を無くしたそうなの。あの子、野良猫なんかを助けようとしてトラックに跳ねられて…!」


「チッ…これから会議だとゆうのに。医者が同じ血液型の血縁者の臓器を移植すればあるいは助かるかもと言っていたぞ。」


「冗談言わないでよ!!誰があの娘の為に体を切るなんてッ!!」


「おい…」


「それにあの娘、前の主人が亡くなってから人との距離を置くようになって学校でも友達を作らないし私達家族とも馴染まない。いつも自分のご飯をそこらの野良猫や犬にあげて……昔から変な子だったわ。私だけじゃなく、誰もあの娘がそこまでして生きることを望んでないわよ。」


「……透に聞こえるぞ。」



「あの娘は今集中治療室で意識不明な状態よ?聞こえるはずがないわ。」


―ピピピッ



「お、会社からだ。
俺は会議だから会社に戻る。後は好きにしろ。」



それは両親からの見捨てられた冷たい言葉…。












―……不思議…全部、聞こえる。




二人の会話を聞いて別に悲しくは無かった。
愛されていなかった事や必要とされていなかった事ぐらい当の昔に、



知っていたことだったから……。







あぁ、私…死ぬんだ。




おかしいね、これから死ぬかもしれないとゆうのに怖いとゆう気持ちは全く無かった。
寧ろ、なんだか少しだけ、





少しだけ…




ほっとしてる……



いつも同じ繰り返すだけの毎日。
何も変わることのない日常はまるで、同じ夢を何度も見ている感じ…。
堪えられなかった。
毎日が同じで、毎日私は一人で……。
小さい頃は家に帰れば暖かい家庭が待っている、そんな夢を、幾度なく、見ていたのだろうか…。



そんなつまらなく、冷めた退屈だった日常も…







やっと…終わる……





私は日向透として産まれたのに、何を理由に何の為に生きてきたのかすら分からない、半端な命だった。



これでやっと、




やっと、終われるんだね……





全てに終わりを告げようとまた瞼を閉じようとした時、

















「終わるものか…巡るばかりさ。」






そこで、あの人に会った…。








――誰……?




耳に聞こえてくるのとは違った、直接脳に響く声に透は閉じかけた瞼を開く。




「おや?僕の声が聞こえるのですか?」



―!!





「クフフフ……散歩はしてみるものですね。」



『…だ、誰……何者なの?』


「透………僕と君は似た者同士かもしれない。」


『え……?』












―――――――







『骸……様…』



腹が潰れ口から血を流し目を虚ろにさせている躯髏の姿。
彼女の意識がツナと雲雀の頭の中にも流れ込んでいた。




「にわかに信じがたいが、彼女は幻覚でできた内臓で延命していたらしいね……」


「な!?」


「幻覚でできた内臓――――――!?」



そんな話が本当にあるのだろうか?
臓器を幻覚で作らせ延命して生きているなんて…。





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(でも彼女は…ここにいる)


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