涙の温度 (1/6)


『ハァ……ハァ…ハァ…』



荒い息を吐きながら目の前にある看板を見上げる。




『黒、曜…ヘルシーランド……』



やっと、着いた。
この中のどこかに、犬と千種がいる…。



『……。』



骸の言葉を信じて何の躊躇いもなく中に足を踏み入れた。



中に入ると予想異常に建物の中が崩れていたり、ここで何があったのか戦った跡があったりした。



『………。』




歩くと足下からはパキッとガラスの破片が砕ける音。
他にも中は酷い有様でカーテンは破れ窓はごなごなに砕けて地面に欠片が散らばっている状態。





『……犬、千種?』



隅から探して行こうと最初の扉を始めに、色んな部屋を開けて見ていくがどの部屋にも二人の姿は無い。




『…、……。』



ここにも…いない。




胸に抱き抱えていた鞄の中を開けて中のものを見る。そこには二人の為に作ったお弁当と銀色に輝く槍の先、


骸様から頂いた大切なもの。これがあるから、私は生きていられる。
私とこの世を繋げる唯一のモノだから大切にしなさい、と以前骸様から言われた。




骸様……犬……千種…………



瞳を閉じて鞄を抱きしめる。







「んああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!???」




突然扉の方から響き渡った大きな絶叫にビクッと身体を強張らせた瞬間、目の前に誰かが入り込んで首を掴まれ押し倒された。
何がなんだか分からないでいると



「まっ、待つびょん!柿ピー!!!」


「………。」


「お前……なんれ…なんれ、こんなところにいるびょん!!!」



千種は犬がこの少女と顔見知りみたいな喋り方に、知り合い?と聞くが犬は凄い勢いで首を横に振る。



「こんなっ、やっ、やつ、ややややややや……」

「………。」




知り合いなのか、と千種に問われて犬が否定したのは悲しいような気もしたけど知らなくて当然。私が、彼等を一方的に知っているだけだから。


帽子を被った人――千種が首を掴んでいた手を離しゆっくりと上からどいてくれた。



この人が、千種…。




改めて千種と犬の顔を見るがハッと我に返り抱えていた鞄が無い事に気が付き身体を起こす。
キョロキョロと鞄を探して目線を走らせていると少し離れた場所に転がっていた。
多分さっき押し倒された時に落としてしまったんだろう。


鞄に向かって手を伸ばす。その際にも犬が何か叫んでいるが私をそれを無視して鞄に手を伸ばし手に取った。
何故だか千種は警戒して武器を構えている。



千種はこの少女が自分達に何か危害を加える前に始末しようとヘッジホッグを構えるが―――




「……っ、どうゆうつもり?」



その腕は後ろから伸びた犬の手により捕まれ阻止される。



「か、柿ピー……オレ………オレ………。」



千種は腕を掴んでいる犬を睨むが掴んでいる本人も何故自分は千種の攻撃を止めたのか分からず混乱していた。




透は二人が何かを話ている間に目当ての物が見つかり包んであった布と蓋を取り鞄の中から取り出した。




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