冷えた心 (1/2)
知らない声に不安になってベッドから飛び起きる。
…あれ?身体…痛く、ない?
身体中に巻いてあった包帯も、無い…。
気付くと何も着てなくて裸だったのでシーツを胸元まで引き寄せる。
周りを見渡せば病院では無く、静かな草原と綺麗な湖がある場所にいた。
『………。』
「クフフ…」
『!誰!』
また聞こえた独特の笑い方……
声のした方に視線を流すとそこには私と同い年ぐらいの男の子が草原に立ってこちらを見ていた。
『…だ、誰……何者なの?』
「クフフ…透………君は、僕と似た者同士かもしれない。」
『……な、まえ…』
どうして、私の名前を…
言いたい事が彼に伝わったのか、クスッと小さく笑う。
「知っていますよ。日向透。」
私は彼に近付く為、ベッドから足を出して地に足を付かせ歩く。
『…貴方の、名前は?』
何故だか、貴方の名前が気になったの。
「僕は六道骸…。透、僕には君が必要だ。」
『えっ……』
私が………必要?
「そうです。僕は今訳あって自由に動くことが出来ない…ですから透、」
『は、はい……』
「僕に、力を貸してくれませんか?」
『……私が、貴方の力になれるの?』
「えぇ。君しかいません。」
嬉しかった…。
貴方に……骸様に、必要だと言ってもらえたことに。
だから私は決めた。
初めて私を必要だと言ってくれたあなたの…
『…私、貴方の……骸様の、力になりたいっ!』
力になりたかった。
初めてだったから。
誰かに必要とされたのも、自分から、意見を挙げたのも。
そう彼…骸様に言えば骸様はニコリと優しく笑い手を差し延べる。
私は差し延ばされたその手を見て首を傾げた。
『?』
「君はこれから名前を変えて、僕の側で僕を支えてください。」
『…。(こくっ)』
名前を変える事にも別に躊躇は無かった。
この名前は好きでも嫌いでもない。
ただ両親が私を呼ぶのに名前が無かったら色々と面倒だから付けたもの…。
女優の母は近所や世間の視線を気にしていたから。
だから、名前に未練は無い。
それに、骸様の為なら……名前ぐらい捨てられる。
じっーと新しい名前を待っていると骸様は私の頬に優しく触れて、
「クローナ、クローナ躯髏………貴女の名前は、クローナ躯髏です。」
『クローナ…クロウ?』
「そうですよ。僕の名のアナグラムです。これからはそう名乗って下さい。」
『分かりました、骸様。』
闇の中でひとりぼっちに咲いていた華は、
光に照らされて新しい世界へと、足を踏み入れた。
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(貴方の為なら…骸様。)
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