涙の温度 (4/6)
目を閉じて精神世界に来てから数分が経った頃。
「骸さぁぁぁぁんっっっ!!!!」
暗い闇の中でぼっーとしていると急に身体に衝撃が来て押し倒された。
犬は透の後ろ姿が何故か骸に重なって見えて骸だと思い抱き着くがその際に手にムギュッとした感覚。
男にはないはずの女性特有の柔らかいものがあった。
『……犬…?』
透は押し倒された事よりもここに犬がいる事に驚き彼を見た。
しかしやはり表情は無表情に近い。
「ム、ムムネネネネネ……ムムククククククネネネネネネネ………」
もはや何を言いたいのか分からない。
顔を赤くさせたり青くさせたりしている犬に首を傾げるがそれよりもこの体勢は辛い…。
『…重い、』
「っ!」
苦しげに言う訳でもなくしれっとして言う透の上から飛びのく。
やっとどいてくれて軽くなった身体を起こして座る。
目の前を見ればやはりそこには城島犬がいた。
『犬…どうして……』
「どっ、どどど、どうしれって、そ、そんなのこっちが………っ」
何かを言いたいようだが考えが纏まっていない頭では何も口に出すことが出来ないでいる。
そんな彼の姿を見ていた透は静かに俯く。
『……ごめんね。』
私、何も出来なくて…
役に立つことが出来なくて、ごめんね、ごめんね。
犬は突然謝り始めた目の前の少女に目を向けた。何故この少女は自分に謝る?
透のゴメンネ、は何に対しての謝罪なのか意味が分からずにいると
「あ……」
ゆらゆらと彼女の身体が揺らめき手をのばすが触れることも無く、少女は霧のように消えた。
まるで、初めからいなかったかのように……
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(ゴメンネ、貴方達の役に立てなくて…)
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