涙の温度 (2/6)



取り出したのは二人の為に作ったお弁当で、彼等に差し出す様に目の前に出す。




「…………。」



二人は予想外なその光景に唖然とする。
自分達の目の前に差し出されたソレは綺麗に食べ物が詰め込まれたお弁当だった。



そのおいしそうな匂いに犬は公園の時みたいに腹の虫を鳴らせる。
それと連動するかのように別の人物の腹からも腹の虫が鳴った。




「柿ピー?」


「………。」



犬は隣にいる無表情な彼を見るがフイッと顔を背けてしまう。
千種も犬と同じで腹を空かせていたのだ。
いくら表情では隠せても身体は正直なもの。




『これ…。』



弁当箱を見つめたままでいる二人に透は無表情のままで差し出す。




「おまえが……作ったのかびょん?」


こくりと首を縦に振り小さく頷く。



「もしかして……オ、オレのために?」


こくりとまた頷く。


「っ……!」




カァァと顔を赤くさせダンッと地面を踏み、




「おおっ、おまえ、バカかびょん!!!なに、わけのわかんねーことやってんらびょん!!!そそっ、そんなっ、そんな弁当なんか、作ってくれなんて誰もたのんでねーびょん!!!いきなり持ってこられたって、そんなの食べるわけがね―――びょ―――ん!!!!!!」




何処か焦りながらじたんばを踏み、怒声を上げている犬に小さくだが透の目が伏せられた。




二人の為に、一生懸命、作った…。
きっと寒い中でお腹を空かせて骸様を、待っているんだろうと、だから温かいままのお弁当を食べさせてあげたくて…此処まで走って来た。
二人に、食べて欲しくて……。




『……分かった。』



持っていた手に力が抜けたのか抜いたのか分からない中で弁当箱が手の上からカランッと乾いた音をさせ地面にこぼれ落ちる。
中身は綺麗に盛り付けされていたご飯などがそれによってぐちゃぐちゃになってしまっていた。

もったいないけど、二人の為に作ったものだから。二人がいらないならこのお弁当は意味がない。





「…………。」


「………………。」




二人とも透の行動に頭が着いていかず、止める隙も無かった。





黙って立ち尽くしている犬と千種になんだか居心地が悪く感じた私はぺこりと頭を下げてから鞄を胸に抱き直し小走りでヘルシーランドを去って行った。




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(ただ、食べて欲しかっただけ…)



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