地獄か楽園か (3/4)
―ピッ、ピッ、ピッ
『…………。』
機械音に何時もより重い瞼を持ち上げる。
身体中が、痛い……。
周りを見渡せば私は白い部屋に寝かされ、機械から流れるチューブが口許と二の腕に繋がれていた。
『……?』
なんで……私…ここに?
身体に異変を感じる。
先程両目を開いたはずだった……のに、右目が、
『(右目が…開かない?)』
右目だけじゃない。
お腹の辺りが何故か軽い……。
『……。』
そっか…
私、トラックに跳ねられたんだ……
あの時、ネコさんを助けようと必死で、車道に飛び出してネコさんを庇ってトラックに跳ねられたんだ。
『(…ッネコ、さん…無事かな?ちゃんと、路地裏に置いといたご飯……食べてくれてる?)』
きっと私、助からない…。
自分の身体の状態ぐらい、自分自身が良く分かる。
もう、ネコさんに……会えないんだ…。
―ピッ、ピッ、ピッ
耳をくすぐる機械音にまた瞼を落とそうとしたとき、
「透がトラックに跳ねられたって!?」
「あなた…!」
……お母…さん…?
それにあの人も、来てるの?
部屋の外で話をしている二人はヒソヒソと話ていた。
「容態はどうなんだ?」
「…駄目ね。右目と内臓を無くしたそうなの。あの子、野良猫なんかを助けようとしてトラックに跳ねられて…!」
「チッ…これから会議だとゆうのに。医者が同じ血液型の血縁者の臓器を移植すればあるいは助かるかもと言っていたぞ。」
「冗談言わないでよ!!誰があの娘の為に体を切るなんてッ!!」
「おい…」
「それにあの娘、前の主人が亡くなってから人との距離を置くようになって学校でも友達を作らないし私達家族とも馴染まない。いつも自分のご飯をそこらの野良猫や犬にあげて……昔から変な子だったわ。私だけじゃなく、誰もあの娘がそこまでして生きることなんか望んでないわよ。」
「……透に聞こえるぞ。」
「あの娘は今集中治療室で意識不明な状態よ?聞こえるはずがないわ。」
―ピピピッ
「お、会社からだ。
俺は会議だから会社に戻る。後は好きにしろ。」
それは両親からの見捨てられた言葉。
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(全部、聞こえる…)
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